先行技術調査のやり方を完全ガイド|AI活用で化学R&Dが変わる

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先行技術調査は、特許を出願する前に「これまで似た技術が公開されていないか」を調べる作業です。2026年は転機の年で、特許庁自身がAIを審査に本格導入しています。化学R&Dの現場でも、これまでのJ-PlatPatの分類検索を土台にしながら、AIで概念検索と並べ替えを補う使い方が現実解になってきました。この記事では、先行技術調査の4類型、明日から使えるJ-PlatPatの5ステップ、AIで実現できる4パターンとその限界、そして化学分野のサービス選び方までを、知財担当者の目線で整理します。

  1. 先行技術調査とは|2026年の意味と4類型を一気に整理
    1. 法律上の位置づけ
    2. 4類型を押さえる
    3. 4類型に共通する課題は「漏れ」と「ノイズ」
  2. 2026年の業界トレンド|特許庁AIは「実装段階」に入った
    1. 特許庁のAI活用5カ年計画は実装終盤に
    2. 業界団体(JIPA・JPAA)も追随
    3. 三者が一致しているメッセージ
    4. 知財担当者にとっての意味
  3. 従来の自力調査手順|J-PlatPat × 分類検索の基本5ステップ
    1. J-PlatPatの位置づけ
    2. 明日から使える実務5ステップ
  4. AI活用のパターンと限界|化学R&Dが押さえる4つの使いどころ
    1. 押さえるべき4つのAI活用パターン
    2. AIの限界① 生成AIの正確性は保証されない
    3. AIの限界② 機械翻訳のクセが残る
    4. AIの限界③ 公的相談はツール紹介まで
    5. 化学R&Dならではの使いどころ
  5. AI特許調査サービスの選び方|カテゴリ別の使い分けとSnorbe反復ループ
    1. サービスを8カテゴリで整理する
    2. 選定軸:5つの観点
    3. 化学R&D企業の典型ユースケース
    4. Snorbeの反復ループ型ワークフロー
    5. 先行技術調査の未来像
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 先行技術調査と特許性調査・出願前調査は何が違いますか?
    2. Q2. J-PlatPatだけで先行技術調査は完結しますか?
    3. Q3. AIに任せれば先行技術調査の漏れはなくなりますか?
    4. Q4. 化学分野の先行技術調査で気をつける点は?
    5. Q5. 外注と内製、どちらが向いていますか?
    6. Q6. 先行技術調査にかかる時間の目安は?
    7. Q7. AI先行技術調査ツールを選ぶときの軸は?
    8. 関連記事
  7. 調査手法について

先行技術調査とは|2026年の意味と4類型を一気に整理

先行技術調査の4類型(出願前・無効・SDI・技術動向)と虫眼鏡を中心にしたイラスト

先行技術調査は「これから出願する発明と似た技術が、すでに公開されていないか」を調べる作業のことです。特許庁の審査基準では、審査官自身がこの調査を行うと明記されています。つまり、出願人にとっては「審査官と同じ目線で、自分の発明が新しいかどうかを確認する作業」と言えます。

法律上の位置づけ

特許庁の特許・実用新案審査基準では、「審査官は…先行技術調査をする」とされ、調査結果を踏まえて新規性と進歩性を判断するという順序が明示されています。これは特許法29条で定められた「発明が新しいこと」「容易に思いつかないこと」を確認するために、まず先行技術を見つけにいくという話です。

特許庁の産業構造審議会資料でも、先行技術調査は「重複した研究開発に伴う投資リスクの回避」と「確実な特許権の取得」に貢献すると整理されています。化学R&Dの現場で言えば、「数千万円かけた研究が、すでに公開された特許に潰される」事態を防ぐためのインフラ作業です。

4類型を押さえる

先行技術調査と呼ばれるものは、実は目的別に4つに分かれます。

類型ひと言で目的
出願前調査出すべきかを見極める新規性・進歩性を確認してから出願する
無効資料調査潰せるかを探す他社特許に対抗する資料を集める
侵害防止調査踏まないかを確かめる製品が他社特許を侵害しないか確認する
技術動向調査どこへ進むかを読む業界全体の出願トレンドを掴む

侵害防止調査は「クリアランス調査」とも呼ばれます。技術動向調査は、INPITが推進するIPランドスケープにつながる入口です。

この記事は、4類型のうち出願前調査にフォーカスして掘り下げます。無効資料調査や侵害防止調査でのAI活用については、別記事「特許調査AI 完全マニュアル」で詳しく扱っているので、興味のある方はそちらをご覧ください。

4類型に共通する課題は「漏れ」と「ノイズ」

特許庁の進歩性判断資料では、「関連する先行技術を漏れなく発見するように」とされています。実務上、すべての類型に共通する難しさは2つです。

  • 漏れ:自分が知らない表現で書かれた特許や、海外の文献を取りこぼす
  • ノイズ:検索式を広げすぎて、関係ない数百件を読まされる

化学分野では、ここに「マークッシュ構造(化合物のクレーム表現)」「用途表現の幅広さ」「機械翻訳のクセ」が重なります。だから、検索式を組むのも、ヒットを読み込むのも、他分野より時間がかかりやすいのです。

ここまでが、先行技術調査の地図です。次のセクションでは、2026年の業界トレンドとして、特許庁とAIの関係がどう変わったかを見ます。

2026年の業界トレンド|特許庁AIは「実装段階」に入った

特許庁とAI基盤が統合される2026年トレンドのイラスト

2026年の先行技術調査をめぐる最大の変化は、特許庁自身がすでにAIを「検討」ではなく「実装」のフェーズで使い始めていることです。これは民間ベンダー側の動きではなく、審査制度そのものの話なので、知財実務に対する影響が大きいです。

特許庁のAI活用5カ年計画は実装終盤に

特許庁は2022年5月にAI技術の活用に関する5カ年の計画を公表しました。2024年度改定版では、「概念検索や特許文献のランキング表示等」の先行技術調査①が導入フェーズへ移行しています。さらに2025年度改定版では、先行技術調査②(検索手法の高度化)も導入フェーズになりました。

ひとことで言えば、「AIは検索結果の入口を整える段階から、検索手法そのものを賢くする段階へ進んだ」ということです。

2025年版の特許庁年次報告では、AI関連出願の増加に対応するため「AI審査支援チーム」や「AIアドバイザー」の設置が明示されました。さらに2026年のJPO STATUS REPORTでは、日米欧三極特許庁がAI活用を共同で進める方針が示されています。日本ローカルの一過性施策ではなく、国際的な制度トレンドです。

業界団体(JIPA・JPAA)も追随

特許庁の動きに合わせて、業界団体も実装フェーズに入りました。

三者が一致しているメッセージ

ここで重要なのは、特許庁(制度側)、JIPA(企業側)、JPAA(専門職側)の三者が、別々の立場でありながら同じ方向を向いていることです。

AI活用は進むが、責任は人に残る。

これは2026年の知財実務における共通理解と言えます。AIで効率化はする、ただし最終判断は人が行う。この前提を理解しておくと、ベンダーの「全自動」の宣伝文句を冷静に評価できるようになります。

知財担当者にとっての意味

「AIを使うべきかどうか」はもはや論点ではありません。論点は「どの工程に、どう組み込むか」です。

化学R&D企業の知財担当者にとっては、次の3つの工程がAIと特に相性が良いです。

  1. 検索式の補助:自然な日本語からクエリ候補を生成する
  2. 大量公報のスクリーニング:概念近さで並べ替える
  3. 抜け漏れチェック:人が組んだ検索式の死角を別の角度から補う

次のセクションでは、これらAIの土台になる「J-PlatPatでの基本5ステップ」を整理します。AI活用の前に、まずは無料の基盤を押さえます。

従来の自力調査手順|J-PlatPat × 分類検索の基本5ステップ

J-PlatPatと分類検索で実務に使える5ステップのフローイラスト

AIが進化しても、先行技術調査の土台はいまもJ-PlatPatです。AIサービスを比較する前に、まずは無料の公的データベースで何ができるかを押さえます。ここを飛ばすと、AIサービスに何を任せるべきかが判断できなくなります。

J-PlatPatの位置づけ

J-PlatPatはINPIT(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)が提供する無料の特許情報サービスです。2015年3月に運用開始し、登録不要で世界の特許・実用新案、意匠、商標、審決、公報情報、リーガルステータス情報まで検索できます。日本国内だけでなく、欧米含む各国の文献に届くのが強みです。

2018年改修で、特許分類とキーワードの組み合わせ検索、近傍検索、米国・欧州・国際出願の英文テキスト検索が可能になりました。さらにOPD(One Portal Dossier)照会にも対応しているため、各国の経過情報を一本化して見られます。

利用状況の数字も押さえておくと、社内でAIサービス導入を説明するときに使えます。INPITの令和6年度評価調書では、J-PlatPat普及件数43,962件、企業活動等で「有効に利活用した」割合が83.6%とされています。一方でJ-PlatPat講習会の令和6年度報告では、受講動機の65%が「基本的な利用方法を習得するため」でした。普及はしているが、使いこなしは未成熟というのが、この国の実情です。

明日から使える実務5ステップ

化学R&Dの知財担当者が、出願前の先行技術調査をやるときの典型ワークフローを5ステップで整理します。

ステップ1:発明の要素を分解してキーワード候補を出す

発明提案書を読んで、構成要素を分解します。化学R&Dでは、「物質名」「機能・効果」「用途」「製法」「組成比」「測定条件」といった切り口で要素を書き出します。同じ概念でも、特許文献は異なる表現で書かれることが多いので、同義語・上位概念・下位概念も並べておきます。例えば「リチウムイオン電池の正極材」なら、「リチウムイオン二次電池」「LIB」「正極活物質」「カソード材料」のように展開します。

ステップ2:IPC・FI・必要に応じてFタームへ寄せる

キーワードだけで戦うと、表現ゆれを拾えません。特許庁の講習会資料でも「特許分類の概要とそれらを用いた先行技術文献調査」が中核に据えられています。IPC(国際特許分類)→FI(日本独自の細かい分類)→Fターム(さらに細かい技術観点)の順で絞り込みます。化学分野ならHクラス(電気)の電池系、Bクラス(処理操作・運輸)の触媒系、Cクラス(化学・冶金)のポリマー・材料系を中心に当たります。

ステップ3:分類×キーワードで母集団を作る

J-PlatPatの「特許・実用新案検索」で、IPC/FIとキーワードをAND結合して母集団を作ります。INPIT教材でも、検索条件はキーワード、公開番号、出願日、IPCなどを組み合わせる前提です。ヒット件数が数十〜数百件に収まる粒度を目指します。多すぎるなら近傍検索や追加分類で絞る、少なすぎるなら同義語や上位分類で広げる、を繰り返します。

ステップ4:公開公報だけでなく経過情報・審査書類・OPDを確認

ヒットした文献のうち、近そうなものは公開公報だけでなく経過情報や審査書類も見ます。J-PlatPatでは特許・実用新案の1964年以降の経過情報、1990年以降の審査書類、2000年以降の審判書類を参照できます。化学では、審査官が引用した先行技術が「自分の発明にも刺さる引用文献の宝庫」になることが多いので、必ず辿ります。さらにOPDで他国の経過情報まで確認すると、ファミリ展開先での議論まで分かります。

ステップ5:AIで要約・類似文献探索・抜け漏れチェック

最後に、ステップ1〜4で組んだ検索式や読み込んだ文献を、AI調査ツールに渡します。やりたいのは3つです。

  • 要約:100件超の文献を、技術観点でグルーピングして並べ直す
  • 類似探索:母集団に入らなかった概念近接文献を、ベクトル検索で拾う
  • 抜け漏れチェック:人が組んだ検索式の死角を、別角度の検索式で補完する

ここまでが、J-PlatPatを土台にした基本5ステップです。なぜ「ステップ5でAIを使う」前提にできるのか、次のセクションで2026年のAI活用の4パターンと、その限界を整理します。

AI活用のパターンと限界|化学R&Dが押さえる4つの使いどころ

AI特許調査の4パターンと限界を2x2で示したイラスト

特許庁が「実装段階」と位置づけているAI活用は、実は4つのパターンに整理できます。これは特許庁のアクションプランから読み取れる骨格で、どのAIサービスを評価するときも、この軸で見ると判断がブレません。

押さえるべき4つのAI活用パターン

特許庁の2024年度・2025年度AIアクションプランを整理すると、次の4つになります。

パターン何をするか化学R&Dでの効きどころ
概念検索自然文や近い表現から拾う用途表現ゆれ、新規物質名の同定
ランキング表示検索結果を概念近さで並び替える100件超の母集団を効率よく上から読む
検索手法高度化検索式そのものをAIが賢くする化学クレーム独特の構造を踏まえた検索
分類付与・本願理解文献の分類や要点を抽出マークッシュ構造の整理、用途別グルーピング

2025年度改定版では「検索手法の高度化」が新たに導入フェーズに加わり、AIの守備範囲がさらに広がっています。

JIPAの情報活用委員会も、AI搭載の特許調査・分析ツールを「先行文献調査、新規用途探索」など目的別に整理する方針を出しています。つまり、AIは万能ではなく、用途別に使い分けるという前提が業界全体で共有されています。

AIの限界① 生成AIの正確性は保証されない

JPAAの生成AIサービスに関するガイドラインでは、こう明記されています。

生成AIから得られた生成物は、その正確性が保証されたものではない

これは弁理士の専門職としてのガイドラインですが、企業の知財担当者にとっても同じです。AIに「先行技術を全部出して」と任せて、その出力をそのまま信じて出願すると、後から実在しない文献を引用していた、あるいは重要な文献が抜けていた、というリスクがあります。

実務では、AIは「漏れを減らす補助」と捉え、最終的な引用や判断は人が確認する、というワークフローにしておく必要があります。

AIの限界② 機械翻訳のクセが残る

J-PlatPat自体も、欧米公開特許の和文抄録について2022年4月発行分以降は機械翻訳データに変更され、不適切な翻訳等の利用結果について責任を負わないと明示しています。

化学分野では、特に中国・韓国特許の翻訳ミスが致命的になることがあります。化合物名や反応条件は、わずかな訳語の違いで意味が変わるからです。AI翻訳と機械翻訳の二重リスクがあることを念頭に、原文に当たる工程は外せません。

AIの限界③ 公的相談はツール紹介まで

INPITの相談窓口資料では、「先行技術等の調査業務(J-PlatPatの紹介を除く。)」には対応しないと明示されています。AIサービスを導入しても、最終的な調査責任は自社(または委託先の特許事務所・調査会社)に残るというのが、制度設計の前提です。

化学R&Dならではの使いどころ

化学分野でAI活用が特に効くシーンを3つに絞ります。

シーン1:用途表現ゆれの吸収

「リチウムイオン電池正極材」「LIB cathode」「正極活物質」「カソード材料」――同じ概念が、特許ごとに違う表現で書かれます。概念検索を使えば、表記ゆれを跨いで類似文献を引き当てやすくなります。

シーン2:化学クレームの読み解き補助

マークッシュ構造(「R1がC1〜C6のアルキル基…」のような一般化された化学構造クレーム)を含む文献は、人が読むと数十分かかります。AIで構造クレームを要点抽出すると、レビュー時間が圧縮できます。

シーン3:機械翻訳の横串チェック

中国・韓国特許の機械翻訳について、複数AIで翻訳を取り、原文と突き合わせる工程を入れると、致命的な誤読のリスクを下げられます。化学では特に、化合物名と反応条件の翻訳精度が論点になります。

ここまでで、AI活用の4パターンと3つの限界、そして化学R&D特有の3つの使いどころが見えました。次のセクションでは、具体的なAI特許調査サービスを8カテゴリで整理して、自社に合うものをどう選ぶかを掘り下げます。

AI特許調査サービスの選び方|カテゴリ別の使い分けとSnorbe反復ループ

Snorbe反復ループ型ワークフローのイラスト

最後のセクションでは、現在出回っているAI特許調査サービスをカテゴリ別に整理して、自社に合うものをどう選ぶかを整理します。固有名で比較すると訴訟リスクやサービス入れ替わりがあるので、ここではカテゴリと選定軸で押さえます。化学R&Dの典型ユースケースと、Snorbeの反復ループ型ワークフローも最後に紹介します。

サービスを8カテゴリで整理する

2026年時点で日本市場に出ているAI特許調査・知財実務支援サービスは、大きく8カテゴリに分けられます。

カテゴリ代表機能想定ユーザー価格帯
T社(特許検索特化AI)概念検索、類似文献探索、ランキング調査担当、知財部低・中・高
L社(知財実務AI)要約、ドラフト支援、文書理解弁理士、企業知財低・中・高
P社(特許マイニング系)出願人分析、用途探索、動向分析IPランドスケープ担当中・高
W社(知財情報統合系)DB横断、経過情報、分析統合大企業知財
N社・海外P社(海外Deep Research)複数ソース調査、構造化レポート調査企画、戦略担当低〜高
F社(国内軽量AI検索)FAQ、簡易検索補助、要約少人数知財、研究者
Pf社(特許DB特化)特許・審査・リーガル情報閲覧全般無料〜高
Fr社(知財AI分析)先行調査+分析+可視化大企業、調査会社中・高

カテゴリは目的別に重なる部分もあります。例えば「特許検索特化AI」と「知財実務AI」は、同じ会社の異なるプロダクトラインということもあります。比べるときは社名ではなく、自社の課題がどのカテゴリに当てはまるかで選びます。

選定軸:5つの観点

サービスを評価するときは、次の5つの軸で並べると比較しやすくなります。

着眼点
公開価格の有無あり / 問い合わせ
初期費用なし / あり / 不明
月額感低 / 中 / 高
無料枠あり / なし
向く業務先行調査 / 動向分析 / 文書作成 / 統合管理

公開価格がない=悪、というわけではなく、化学業界では「公開価格なし」のエンタープライズ系も普通です。重要なのは、自社の年間調査件数とテーマ数に対して、費用対効果が成立するかです。

化学R&D企業の典型ユースケース

INPITのIPランドスケープ活用事例集から、化学R&D向けに参考になる3つのユースケースを紹介します。

ユースケース1:機能材料の新用途探索

化学メーカーA社の例では、自社技術が活かせそうな用途を特許情報分析で見いだし、市場情報分析で有望用途を絞り込んでいます。先行技術調査を「拒絶を避けるため」だけに使うのではなく、「この技術はどの用途に展開できるか」という探索に拡張する使い方です。AIで概念近接の特許群を取り出して、出願人ごと・用途ごとにグルーピングするのが効きます。

ユースケース2:素材技術の連携先探索

素材メーカーC社の例では、「滑りやすい部材の把持」を課題とする特許を集め、出願人分析から連携候補を見つけています。触媒・電池材料・ポリマーでも応用しやすい構図です。先行技術調査の母集団を、出願人やキーマン発明者の軸で見直すと、共同研究や技術導入の候補が浮かびます。出願マップを可視化する手法は、別記事「化学業界の特許マップ作成」で詳しく扱っています。

ユースケース3:出願前調査からテーマ評価への拡張

INPITは、研究開発の早い段階での特許情報分析が「研究開発投資の重点化、権利化・秘匿化の検討、権利取得判断等」に役立つと説明しています。総合化学メーカーでは、テーマ立ち上げ段階で先行技術調査を入れて、「そもそも投資する価値があるか」を判断する使い方が現実的です。

Snorbeの反復ループ型ワークフロー

ここまで読んでいただくと、化学R&Dの先行技術調査には、

  • 自然な日本語で投げられること(化学R&Dの言葉でクエリを組み立てられる)
  • 複数の専門DBを横断すること(J-PlatPatだけでなく、海外特許・学会論文まで)
  • 過去の調査が記憶として育つこと(次のテーマで前の調査を再利用できる)

の3つが揃ったツールが向いていることが見えてきます。私たちが開発しているSnorbeは、まさにこの3点を中心に設計しています。

Snorbeでは、知財担当者が自然な日本語で「リチウムイオン電池の固体電解質に関する先行技術を、機能材料の用途展開も含めて調べて」と投げるだけで、J-PlatPat・Google Patents・EPO・Semantic Scholar・arXiv・PubMedといった専門DBを横断して調査します。検索式そのものはAIが自動で組み立てるので、IPC/FI/Fタームを暗記する必要はありません。

特徴的なのは、完全記憶型のナレッジグラフです。一度実行した調査は、出願人・技術分類・引用関係といった構造つきで蓄積されます。翌日「あの調査の続きで、SMILESベースで類似化合物まで広げて」と続けると、Snorbeが前回の文脈を覚えたまま、深掘りできます。テーマ単位ではなく、知財部門としての継続的な調査資産として育っていきます。

価格は月20ドル〜(チームプランあり)で、新規登録時に無料クレジットが付与されます。まずは無料クレジットで、ワークフローに馴染むかを確認してみてください。

Snorbeの特許調査機能を試す

先行技術調査の未来像

最後に、JPAA・JIPA・JPOの三者が共有しているメッセージをもう一度引用します。

AI活用は進むが、責任は人に残る。

このメッセージは、化学R&Dの知財担当者にとって、むしろ希望でもあります。AIが進化するほど、調査担当者は「漏れを潰す検索式の達人」から「事業判断につながる調査をデザインする戦略家」へシフトできるからです。J-PlatPatの分類検索を土台にしつつ、AIで概念検索・ランキング・抜け漏れチェックを補う。この組み合わせを月曜日から試してみてください。

なお、無効資料調査や侵害防止調査でのAI活用については、ピラー記事「特許調査AI 完全マニュアル」で詳しく解説しています。先行技術調査以外の調査業務にもAIを広げたい方は、そちらをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 先行技術調査と特許性調査・出願前調査は何が違いますか?

「先行技術調査」は4類型(出願前調査・無効資料調査・侵害防止調査・技術動向調査)をまとめた包括的な呼び方です。「特許性調査」と「出願前調査」は実質的に同じ意味で、4類型のうち「これから出願する発明が新規性・進歩性を持つかを確認する調査」を指します。社内文書や事務所ごとに呼び方が分かれることがあるので、依頼するときは目的をはっきり書き添えると認識ずれを防げます。

Q2. J-PlatPatだけで先行技術調査は完結しますか?

日本国内出願の基本的なチェックなら、J-PlatPatでかなり広くカバーできます。ただし化学R&Dでは、海外特許の非特許文献、学会論文、機械翻訳の精度といった論点が残ります。J-PlatPatを土台に、母集団生成と経過情報の確認まではJ-PlatPatで、概念検索・要約・抜け漏れチェックはAIで補う、という二段構えが2026年の現実解です。

Q3. AIに任せれば先行技術調査の漏れはなくなりますか?

なくなりません。JPAAの生成AIサービスに関するガイドラインも「生成AIから得られた生成物は、その正確性が保証されたものではない」と明示しています。AIは「漏れを減らす補助」と捉え、出願判断や引用文献の確定は必ず人が確認するワークフローを設計してください。AI出力の根拠(出典)が示されるツールを選ぶと、確認工程の負荷が下がります。

Q4. 化学分野の先行技術調査で気をつける点は?

3つあります。1つ目はマークッシュ構造(一般化された化学クレーム)の読み解きで、人が読むと時間がかかるためAI要約が効きます。2つ目は用途表現のゆれで、同じ物質でも「正極材」「カソード材料」「LIB cathode」などバラバラに書かれるため、概念検索が向きます。3つ目は中国・韓国特許の機械翻訳の精度で、化合物名や反応条件の訳語ミスが致命的になることがあるので、原文確認の工程を必ず残してください。

Q5. 外注と内製、どちらが向いていますか?

年間調査件数とテーマの戦略性で判断します。年間数件で、出願判断に直結する重要案件中心なら、特許事務所や調査会社への外注が確実です。年間数十件以上を捌く必要がある総合化学メーカーや素材メーカーなら、内製+AI補助の体制が費用対効果で勝ちます。途中段階では、外注で出てきた検索式や引用文献を社内でAI再現できる体制を作る、というハイブリッドも現実的です。

Q6. 先行技術調査にかかる時間の目安は?

1テーマあたり、化学分野では人手だけだと半日〜数日かかります。母集団の規模、マークッシュ構造の有無、海外特許の取り扱いで大きく振れます。AIで母集団スクリーニングと要約を入れると、レビュー時間が3〜5割短縮できる感触です。ただし最終的な引用判断は人が行うため、短縮の限界はあります。「3日かかっていた調査を半日に」ぐらいが現実的な改善幅です。

Q7. AI先行技術調査ツールを選ぶときの軸は?

本文で挙げた5軸(公開価格の有無・初期費用・月額感・無料枠・向く業務)に加えて、化学R&D特化なら次の3点を確認してください。

  1. 専門DBの横断範囲(J-PlatPat、Google Patents、EPO、Semantic Scholar、PubMedなど)
  2. 過去調査の蓄積機能(ナレッジグラフや継続的な調査資産化)
  3. エビデンスの提示方式(AIが引用した出典が一覧できるか)

カタログスペックだけでは判断しきれないので、無料枠で1テーマ走らせて、自社のワークフローに馴染むかを確かめるのが一番確実です。

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調査手法について

こちらの記事はグラフAIリサーチプラットフォームのSnorbeを使って作られています。Snorbeは研究開発・新規事業向けの調査テーマに応じた幅広い項目のオートリサーチや、ナレッジグラフの構築、構造化レポートの生成ができるAIリサーチツールです。

Screenshot

調査したいテーマを入力するだけで、AIが深堀りすべき観点や広げるべき調査項目をレコメンドしながら、自動でリサーチを進めます。収集した情報はナレッジグラフとして蓄積され、未調査領域(ホワイトスペース)を可視化しながら調査の網羅性を高めていけます。

また、観点マトリクスを30秒・構造化レポートを10分で自動生成する機能があり、出典付きのレポートをMarkdown/PDF形式でエクスポートできます。調査の元データも保存されるため、ファクトチェックや社内共有も容易です。

ご利用をご希望の方は、こちらよりお申し込みください。

また、グラフAIを活用した社内ナレッジ管理や、研究開発・新規事業のリサーチ支援、セルフホスト導入のご相談も受け付けています。お困りの方はお気軽にご連絡ください。

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