CVCA 顧客価値連鎖分析とは?|顧客×価値×時間の3D対比で見る使い方

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CVCA 顧客価値連鎖分析とは? 顧客×価値×時間の3D対比で見る使い方

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CVCA(Customer Value Chain Analysis、顧客価値連鎖分析)は、事業に関わる登場人物を全員あげて、その間で流れる価値(お金・情報・モノ・サービス・気持ち)を矢印で描く地図です。スタンフォード大学の石井浩介教授と大学院生Krista Donaldsonが2001年頃に機械設計コースの教材として体系化し、2006年にResearch in Engineering Design誌で論文化されました。マイケル・ポーターのバリューチェーンが社内活動のコスト構造を線形で描くのに対し、CVCAは社外を含む価値交換ネットワークをノードと矢印で描きます。

この記事では、CVCAを顧客セグメント×提供価値×時間軸(獲得・継続・離反)の3軸で立体的に読み解く方法を、事業企画・カスタマーサクセス・マーケター・BDMの実務目線でまとめます。描き方の3ステップ、隣接フレーム(BMC・サービスブループリント)との棲み分け、B2B SaaS・両面市場・医療のマルチステークホルダー事例、そしてAIエージェントが新しい価値交換の主体になるAI時代の拡張までカバーします。

  1. CVCAとは? 一言でいうと「関係者を全部あげて、間で流れる価値を矢印で描く地図」
  2. 3D対比で読み解く:顧客セグメント × 提供価値 × 時間軸
    1. 軸1:顧客セグメント(誰の顧客まで描くか)
    2. 軸2:提供価値(矢印に何を載せるか)
    3. 軸3:時間軸(獲得・活性化・継続・離反で描き分ける)
  3. 描き方3ステップと、混同しがちなフレームワークとの整理
    1. ステップ1:ステークホルダーを洗い出す
    2. ステップ2:ノード間を価値でつなぐ
    3. ステップ3:全体を眺めて修正する
    4. 隣接フレームとの棲み分け
  4. 実務適用例:SaaS・両面市場・医療のマルチステークホルダー
    1. B2B SaaSのカスタマーサクセス設計
    2. 両面市場(プラットフォーム)の診断
    3. 医療のマルチステークホルダー
    4. リコー社内ワークショップの自動販売機事例
    5. スマートシティ・IoTの多主体連携
  5. AI時代の再定義と、CVCAをリサーチで反復して育てる実践ループ
    1. AIエージェントを含む拡張CVCA
    2. CVCAをリサーチで反復して育てる実践ループ
    3. よくある失敗パターン
    4. これから広がりそうな展望
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. CVCAとPorterのバリューチェーンは何が違うのですか?
    2. Q2. CVCAは誰でも描けますか? 専門知識は必要ですか?
    3. Q3. CVCAはビジネスモデルキャンバス(BMC)と併用できますか?
    4. Q4. AIエージェント時代にCVCAは古びていませんか?
    5. Q5. CVCAを描いても意思決定に使えていない気がします。どうすればよいですか?
    6. Q6. CVCAを描くツールは何がおすすめですか?
  7. 調査手法について

CVCAとは? 一言でいうと「関係者を全部あげて、間で流れる価値を矢印で描く地図」

CVCAの基本を示すステークホルダー地図のイメージ

CVCA(Customer Value Chain Analysis、顧客価値連鎖分析)は、ある事業や商品を取り巻く登場人物をぜんぶ書き出して、その間で流れる価値(お金・情報・モノ・サービス・気持ちなど)を矢印で結んだ地図のことです。中学校でクラス委員を決めるときに、教室のなかで「誰が誰と仲がいいか」「誰が誰の言うことを聞きやすいか」を線で描き足していく人物相関図があると思うのですが、あれをビジネスの登場人物向けに描くイメージです。

このフレームは、意外なことに経営戦略ではなくエンジニアリングの世界から生まれました。スタンフォード大学で機械工学のプロダクト設計を教えていた石井浩介(Kosuke Ishii)教授と、大学院生のKrista Donaldsonが、2001年ごろのME317 Design for Manufacturabilityというコースの教材として使い始めたのがはじまりです。学術的な原典はDonaldson・Ishii・Sheppard “Customer Value Chain Analysis”(Research in Engineering Design, 2006年)で、Springerに全文があります。

「モノを作る前に、そのモノをめぐって誰が誰にどんな価値を渡すのかを図にしよう」というのがCVCAのそもそもの発想です。ここが重要で、経営コンサルタントが好んで使うマイケル・ポーターのバリューチェーン(1985年)とは出自も目的もちがいます。ポーターのそれは社内の付加価値プロセス(購買→製造→出荷→販売→サービス)を線形に並べてコスト構造を見る図でした。それに対してCVCAは社内外を含めたエコシステム全体をネットワークで描きます。詳しくはFourWeekMBAのPorter Value Chain解説Gary Foxの「The Value Chain Is Dead」が比較を試みています。

日本では慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)が普及ハブになっていて、ここで石井門下の研究者たちがWCA(Wants Chain Analysis、欲求連鎖分析)という日本発の派生手法まで生み出しました。牧野・前野・白坂の「欲求連鎖分析」論文(日本機械学会論文集C編、2012年)や、慶應SDMの前野研究室WCAページで詳細を読めます。行政でも総務省の「実践ガイドCVCA」が公開されていて、公共サービス設計に応用可能なフレームとして紹介されています。

事業企画やカスタマーサクセスの実務でこの図を描く価値はどこにあるのか。ひと言でいうと「三方よし」の見える化です。売り手・買い手・世間の三者だけでなく、実際にはサプライヤー、決済プロバイダー、規制当局、コミュニティ、AIエージェントまでもがビジネスに参加しています。それぞれが「何を受け取り、何を差し出しているか」を1枚の紙に描くだけで、価値を出しっぱなしで疲弊している主体や、価値をもらいすぎている主体が浮かび上がります。リコーが公開した「三方よし!のビジネスの創り方」というnote記事では、社内ワークショップで自動販売機のCVCAを描いてから、10分のブレストで6件の新規事業案が飛び出したそうです。ここが「関係者ぜんぶを地図にする」ことの威力が出る瞬間です。

3D対比で読み解く:顧客セグメント × 提供価値 × 時間軸

顧客セグメント×提供価値×時間軸の3D対比のイメージ

CVCAをただ一度描いて終わるフレームだと思っている人がいたら、それは半分もCVCAを使えていません。3つの軸で立体的に読み解くと、事業の見え方がまったく変わります。ここではその3軸を順番に解説します。

軸1:顧客セグメント(誰の顧客まで描くか)

CVCAの一番の見どころは、「顧客の顧客」まで描くところにあります。B2B SaaSを例にすると、あなたの契約相手(企業)だけでなく、その企業内で毎日ツールを触るエンドユーザー、稟議を通す意思決定者、隣の部署でツールと連携している別のSaaS担当者、さらにその企業のお客さん(B2B2Cのエンドカスタマー)までを地図に含めます。同じB2B SaaSでも、「導入前のチャンピオンユーザー」「導入後の運用管理者」「経営層」「エンドユーザー」で価値の受け取り方はぜんぶ違います。才流の「カスタマーサクセスとは?」の解説では、THE MODEL型の組織でMarketing→Inside Sales→Field Sales→Customer Successへとバトンをつないでいく設計を「社内向けのバリューチェーン」として説明していて、これはまさに社内CVCAの発想です。

軸2:提供価値(矢印に何を載せるか)

CVCAが優れているのは、矢印にお金だけでなく情報・モノ・サービス・気持ち・苦情・感情まで載せてしまうところです。BlueLogicの解説記事では、Apple・レコード会社・アーティスト・消費者・通信キャリアの間で楽曲データやロイヤリティが循環するiPod/iTunesモデルを図示しつつ、感情の矢印まで含めてこそ「三方よし」を検証できると指摘しています。電通総研の用語解説も、金銭の矢印しか描かない図はCVCAとしては不完全だ、というトーンで書いています。

たとえばフードデリバリーのUber Eatsを想像してみてください。飲食店と食べる人は「料理を作ってもらった/食べておいしかった」という体験と気持ちでつながっています。ところが配達員は「配達料をもらった」という金銭のやり取りでしかつながっていません。この非対称さがサービス全体の脆さを説明する診断になる、という視点はYasabi noteの「Uber EatsのCVCA診断」記事などで語られています。

軸3:時間軸(獲得・活性化・継続・離反で描き分ける)

3つ目の軸が、SaaS時代のCVCAで一番おいしい部分です。同じ事業でも時間の流れ(時期)ごとに登場人物と価値の矢印が変わります。SaaS界隈で有名なDave McClureのAARRRフレーム(Acquisition, Activation, Retention, Referral, Revenue)と組み合わせると、次のように描き分けられます。

  • 獲得フェーズでは、広告プラットフォーム、SEOツール、コンテンツ配信媒体が主要ステークホルダーになります
  • 継続フェーズになると、カスタマーサクセスチーム、コミュニティ、ヘビーユーザー同士のクチコミが主役に入れ替わります
  • 離反フェーズでは、競合、オフボーディング担当、返金・クレーム対応が浮かび上がってきます

海外のグロースハック界隈では、GamerSEOのRARRAフレームワーク解説などが「Retention最優先の並べ替え」を推していて、これはCVCAをRetentionフェーズ中心で描き直す発想と親和的です。実務では「時間別CVCA」を3枚くらい重ねて描くと、どのフェーズで価値の流れが細るのかが見えてきます。ここが、CVCAをただの新規事業ツールから「Retention設計の武器」に格上げする視点です。

描き方3ステップと、混同しがちなフレームワークとの整理

CVCAワークショップで関係者図を描くイメージ

ここからは実際に描いてみるフェーズの話です。ワークショップで手を動かすときは、次の3ステップで進めます。

ステップ1:ステークホルダーを洗い出す

まずはA3の紙かMiroやFigmaのボードに、事業に関係する登場人物を残らず書き出します。メーカーと消費者だけでなく、原材料の供給業者、物流、規制当局、金融機関、社会(コミュニティ・SNSでの評判なども含む)まで、価値の環に触れる主体をすべてノードにします。ただし過剰に増やすと図が読み取れなくなるので、実質的な関係を持つプレーヤーに絞ります。Gov-ToolBoxのCVCA解説では、この段階でチームで意見を出し合いながら「本当にこの人は関係あるか」を議論することが推奨されています。

ステップ2:ノード間を価値でつなぐ

洗い出したノードの間に矢印を引き、金・情報・モノ・サービス・気持ちなどを重ねてラベルを載せます。1本の矢印に複数の価値を載せてもかまいません。時系列順に矢印に番号を振っておくと、後で読み返すときに便利です。総務省の実践ガイドCVCAは、5〜7名のチームで約3時間半かけて回すワーク割を推奨していて、この矢印を引くところが議論のヤマ場だと書いています。

ステップ3:全体を眺めて修正する

描き終わったら「価値を出しっぱなしで疲弊しているノード」「価値をもらいすぎているノード」がいないかを全員で見直します。ここが「三方よし」の検証にあたる部分で、リコーのnote記事でも「全員がハッピーで、なおかつ持続可能な関係になっているか」を最終確認するステップとして言及されています。

隣接フレームとの棲み分け

CVCAは似たフレームワークが多く、実務では使い分けに迷います。主要な違いを表にまとめると次のようになります。

フレーム 主眼 描くもの 出自
Porterのバリューチェーン 社内活動のコスト構造 線形の主活動と支援活動 経営戦略(1985年)
CVCA 社外を含む価値交換ネットワーク ノードと矢印 機械工学(2001年)
ビジネスモデルキャンバス 自社1社の事業モデル 9セルの俯瞰図 ビジネス戦略(2005年)
サービスブループリント タッチポイントの表舞台と裏舞台 時系列の帯 サービスデザイン
バリューストリームマッピング 工程のリードタイム 時間軸の工程図 リーン生産方式

インタラクションデザインファウンデーションの解説Asanaのビジネスモデルキャンバス解説によれば、実務では次の順番で使い分けるのが自然です。

  1. Value Proposition Canvas(VPC)で顧客のJobs/Pains/Gainsと自社の価値をすり合わせます
  2. CVCAで外部のステークホルダーとの価値交換を可視化します
  3. BMC(ビジネスモデルキャンバス)で自社事業として9要素に落とし込みます

ニジボックスのブログでは、サービスブループリントとカスタマージャーニーマップは「価値を交換するタッチポイントで何が起きているか」を扱うため、CVCAが上流、Blueprint/CJMが下流という関係になると整理されています。CVCAは「そもそも誰と誰が価値を交換しているのか」を扱うので、いちばん最初に描いて、その上で下流のブループリントに落とすと絵が破綻しにくくなります。

実務適用例:SaaS・両面市場・医療のマルチステークホルダー

SaaS・両面市場・医療のマルチステークホルダー事例のイメージ

ここまで理論の話が続いたので、具体例で「CVCAをこう使うと何が見えるか」を示します。

B2B SaaSのカスタマーサクセス設計

B2B SaaSでは、契約企業、契約企業内のユーザー、意思決定者、パートナー、リセラー、統合先SaaSといった多方向のステークホルダーが絡みます。ここに時間軸を重ねると、AARRRのRetention(継続)フェーズで「価値の交換がバケツリレーで途切れるポイント」を発見できます。才流のカスタマーサクセス解説は、「導入前のチャンピオンユーザーが導入後に別の部署に異動して、価値の受け渡しが途切れる」ケースを繰り返し警告しています。CVCAを描くと、そのチャンピオン依存の危うさが視覚的に浮かびます。

両面市場(プラットフォーム)の診断

Uber、Airbnb、eBayのような両面市場は、乗客とドライバー、ホストとゲストといった複数の顧客グループを引き合わせるプラットフォームです。理論的にはRochetとTiroleがハーバードビジネスレビューの「Strategies for Two-Sided Markets」(2006年)で体系化しています。CVCAで描くと、双方向のマッチング、手数料の抜き方、それぞれのグループに提供する機能の非対称性が地図として現れます。

先ほど触れたUber Eatsの例では、飲食店と消費者は「料理体験」で情緒的につながる一方、配達員は「金銭」のみでつながっているため、思いの不一致が生じている、との診断がYasabi noteの記事で示されています。この非対称性はCVCAを描かないと言語化しにくいです。

医療のマルチステークホルダー

医療領域は、患者、医師、看護師、病院、保険会社、公的機関、製薬会社、医療機器メーカー、規制当局が絡む典型的なマルチステークホルダー構造です。The Health Care Value Chainのような研究では、この非線形なネットワークを「価値の生産者・購買者・提供者」に分解して整理しています。

ペースメーカーのアラーム通知サービスは、CVCAの教材例として繰り返し引用される代表事例です。総務省の実践ガイドCVCAや慶應SDMのイノベーション教育資料でも取り上げられています。患者に取り付けたペースメーカーから通信事業者を経由して医師にアラートが飛ぶ、というシンプルな仕組みですが、CVCAで描くと「誰がお金を払い、誰が情報を受け取り、誰が安心を得るか」が三者三様であることが一目でわかります。

リコー社内ワークショップの自動販売機事例

繰り返し引用してすみませんが、リコーがnoteで公開した社内事例は、CVCAを短時間で回した好例です。飲料会社、設置場所のオーナー、消費者、電力会社、メーカー(自販機ベンダー)を結んで描き、そこから10分のブレストで「販売機のセンサーデータ販売」「在庫可視化サービス」など6件の新規事業案が飛び出したそうです。CVCAは1枚描いた瞬間に発想が加速する、というのがこの事例からわかる実感値です。

スマートシティ・IoTの多主体連携

自治体、都市OS(Urban OS)、通信事業者、電力会社、モビリティ事業者、住民、地元企業が同時に絡むスマートシティは、CVCA的な発想抜きには設計しづらい領域です。5GとIoTが絡むService Value Chainでは、ネットワークスライシングとエコシステムモデリングを組み合わせる枠組みが、MDPIのSensors誌の論文(5G Ecosystem Value Chain)などで提案されています。ここでもCVCAは「そもそも誰が誰と交換しているのか」を最初に整理するために使われます。

AI時代の再定義と、CVCAをリサーチで反復して育てる実践ループ

AIエージェントを含む拡張CVCAとリサーチ反復ループのイメージ

CVCAが2026年時点で古びていないかというと、むしろ「主体」の再定義が起きている真っ最中です。ここでは今後の景色と、実際にCVCAを回すための反復ループを提案します。

AIエージェントを含む拡張CVCA

生成AIとAIエージェントの台頭で、価値交換のネットワークに「AIが新しいステークホルダーとして加わる」変化が起きています。CognizantのマルチエージェントAI事業戦略やGoogle CloudのAgentic AIエコシステム構築は、AIエージェントを「価値交換の新しい基盤」と位置づけて動いています。

さらに一歩進んで、arXivに投稿された論文Agent Exchange: Shaping the Future of AI Agent Economicsは、AIエージェントが自律的に経済取引に参加する「Agent Exchange(AEX)」プラットフォームを提案しています。CVCAが想定してきた「価値の受発信主体」に、いよいよAIエージェントを含めなければならないフェーズに入りました。これから2〜3年でおそらく「Actor=人・組織・AI」の3階層に拡張したCVCAが実務で普通に描かれるようになります。

もう1つ面白いのは、慶應SDMで生まれたWCA(Wants Chain Analysis)との組み合わせです。CVCAは「価値の流れ(Have/Get)」を描きますが、WCAはその奥にある「欲求(Wants)」まで踏み込みます。AIには意思がなく、でも人間の欲求を代行して動くので、AIエージェントが増える時代には「AIの後ろにいる人間の欲求を、CVCA+WCAで描き直す」という新しい実務が必要になります。

CVCAをリサーチで反復して育てる実践ループ

CVCAでいちばんつまずくのは、実は「描く」ところではありません。「そもそも自業界にどんな関係者がいて、どういう相場感で取引しているのか」がわからないフェーズでつまります。ここは、いくらフレームだけを覚えても解決しません。

ここで有効なのが、リサーチとCVCAをセットで回す反復ループです。手順はこうです。

  1. まず叩き台の関係者マップをリサーチで作ります。業界の一次資料(IR、業界レポート、政府統計)と二次資料(メディア、SNS、noteなどの実務記事)から関係者と価値の相場感を集めます。ここでSnorbeのような専門DB横断のリサーチエージェントを使うと、JPO・EPO・Google Patents・arXiv・PubMed・Semantic Scholarといった専門データベースをまたいで関係者を洗い出す作業を、自然な日本語で投げられるので楽になります
  2. 次にCVCAで関係者をつなぎ、価値の矢印を描きます。ここで「わからない矢印」が出てきたら、そこがまさにリサーチが足りていない箇所です
  3. 描いたCVCAを「特定フェーズ・特定顧客セグメントで書き換えたい」ときに、また同じリサーチ環境に投げ直します。継続的な調べ物のログがナレッジグラフに残っていれば、2回目以降のリサーチが加速します

CVCAは1回描いて終わらないフレームです。時間軸で書き分ける、セグメントごとに書き分ける、AIを含めて書き直す。反復のたびに関係者と価値の流れを再取材する下拵えをリサーチエージェントに任せてしまうと、フレームワークを回す速度が段違いになります。

よくある失敗パターン

最後に、実務でよく起きる4つの失敗パターンを挙げておきます。

  • ステークホルダーを機械的に増やしすぎて図が読み取れなくなる
  • 金銭の流れだけを描いて、情報・気持ち・サービスの矢印を省略してしまう
  • 一度描いて満足し、時系列での更新を怠る
  • 「三方よし」が成立していないまま図を仕上げてしまい、離反リスクを見逃す

これから広がりそうな展望

  • デジタルツインとCVCAの融合として、ステークホルダー図を実データで駆動されるシミュレーションに接続し、What-if分析を回す試みが登場しています(MDPIの5Gエコシステム論文がその走り)
  • サーキュラーエコノミー領域では、環境・社会・経済の3側面の価値をそれぞれ矢印にできるCVCAがケンブリッジのValue Mapping Toolと相性がよく、サステナビリティ設計に転用されつつあります
  • Web3/DAOの分野では、ガバナンストークンを通じた分散型の価値交換をCVCAで描き直す「トークン付きCVCA」の議論が広がってきました

CVCAは40年近い歴史のあるフレームですが、AI・データ・分散化のいずれの潮流でも「主体と価値を再定義する土台」として役立ちます。まずは自分の担当事業で1枚、時間軸を1本引いて描いてみてください。書きあげた瞬間に、次に何を調べたらよいかが必ず見えてきます。

よくある質問(FAQ)

Q1. CVCAとPorterのバリューチェーンは何が違うのですか?

A. Porterのバリューチェーン(1985年)は自社内の活動を「主活動」と「支援活動」に分けてコスト構造と競争優位を分析する枠組みで、社内プロセスを線形に並べます。CVCAは、企業を含めた外部エコシステム全体を扱い、ネットワーク構造として描く点が根本的に違います。プラットフォーム・両面市場・デジタルサービスといった、Porterの枠組みが苦手とする領域をCVCAは素直に描けます。

Q2. CVCAは誰でも描けますか? 専門知識は必要ですか?

A. 基本的なフレームはシンプルなので、ワークショップ形式で5〜7名のチームがA3の紙やホワイトボードで描けます。総務省の実践ガイドCVCAでは約3時間半のワークセッションでの回し方が公開されています。専門知識よりも、多様な視点を集めることが重要で、事業企画・営業・マーケ・カスタマーサクセス・エンジニアなど部門を横断したチームで描くと抜け漏れが減ります。

Q3. CVCAはビジネスモデルキャンバス(BMC)と併用できますか?

A. できます。実務では次の順序で使うと自然です。まずValue Proposition Canvas(VPC)で顧客のJobs/Pains/Gainsと自社の価値をすり合わせ、次にCVCAで外部ステークホルダーとの価値交換を可視化し、最後にBMCで自社事業として9要素に落とし込みます。CVCAは複数プレーヤーの相互作用を描くのに向き、BMCは1社の事業モデルを俯瞰するのに向いています。

Q4. AIエージェント時代にCVCAは古びていませんか?

A. むしろ拡張が必要な時期に入っています。生成AIとAIエージェントの登場で、価値交換のネットワークに「AIが新しいステークホルダーとして加わる」変化が起きています。arXivの論文Agent Exchange: Shaping the Future of AI Agent Economicsは、AIエージェントが自律的に経済取引に参加するプラットフォームを提案しており、CVCAのノードに人間だけでなくAIエージェントを含める必要が出てきました。今後は「Actor=人・組織・AI」の3階層で描き直すのが実務標準になっていくと考えられます。

Q5. CVCAを描いても意思決定に使えていない気がします。どうすればよいですか?

A. 3つの視点で見直すことをおすすめします。1つ目は時間軸(獲得・活性化・継続・離反)で描き分けて、どのフェーズで価値の矢印が細るかを比較すること。2つ目は情報や気持ちの矢印まで含めて描き、金銭以外の非対称性を発見すること。3つ目はリサーチと反復ループを組むこと。関係者の相場感がわからないままCVCAを描いてもかたちだけの絵になります。業界レポート・特許・論文などの一次情報を集めながらCVCAを更新するのが実務的です。

Q6. CVCAを描くツールは何がおすすめですか?

A. MiroやFigmaなどのノーコードのボードツールに、Stakeholder Mappingテンプレートが用意されているのでこれを使うと便利です。個人での下書きなら紙とペンで十分で、慶應SDMのイノベーション対話ツールもホワイトボード中心の運用を推奨しています。近年はChatGPTやClaudeにテキストで関係者を投げて図の下書きをMermaid記法などで生成させる試みも増えています。

調査手法について

こちらの記事はグラフAIリサーチプラットフォームのSnorbeを使って作られています。Snorbeは研究開発・新規事業向けの調査テーマに応じた幅広い項目のオートリサーチや、ナレッジグラフの構築、構造化レポートの生成ができるAIリサーチツールです。

Screenshot

調査したいテーマを入力するだけで、AIが深堀りすべき観点や広げるべき調査項目をレコメンドしながら、自動でリサーチを進めます。収集した情報はナレッジグラフとして蓄積され、未調査領域(ホワイトスペース)を可視化しながら調査の網羅性を高めていけます。

また、観点マトリクスを30秒・構造化レポートを10分で自動生成する機能があり、出典付きのレポートをMarkdown/PDF形式でエクスポートできます。調査の元データも保存されるため、ファクトチェックや社内共有も容易です。

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また、グラフAIを活用した社内ナレッジ管理や、研究開発・新規事業のリサーチ支援、セルフホスト導入のご相談も受け付けています。お困りの方はお気軽にご連絡ください。

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