OpenClaw(clawdbot)始め方:AIにPC操作を任せる時代

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OpenClawの本質:「AIとチャットする」時代から「AIにPCを操作させる」時代へ

図解: OpenClawの本質:「AIとチャットする」時代から「AIにPCを操作させる」時代へ

どうやら、私たちはAIとの付き合い方を根本から変える時期に来ているようです。

これまでの数年間、私たちはChatGPTやClaudeといったAIと「チャット」することに熱狂してきました。何かを質問し、答えをもらい、それを自分でコピペして仕事に使う。この流れは素晴らしいものでしたが、正直なところ、少し疲れを感じてはいないでしょうか。「結局、最後の作業をするのは人間なのか」という徒労感です。

抽出: OpenClawの本質:「AIとチャットする」時代から「AIにPCを操作させる」時代へ

そんな中、彗星のごとく現れ、開発者コミュニティを熱狂させているのがOpenClaw(旧:Clawdbot/Moltbot)です。

このツールが提示したのは、非常にシンプルで、かつ衝撃的な未来でした。「AIと会話する」時代を終わらせ、「AIにPCを直接操作させる」時代を始めること。私がこのツールを触ってみて感じたのは、これは単なる新しいアプリではなく、私たちのPCそのものに対する「新しいログイン方法」だということです。

あなたのチャットアプリが「PCの操縦席」になる

OpenClawを一言で説明するなら、「いつものチャットアプリを通じて、あなたのPCを遠隔操作してくれる忠実な部下」と言えるかもしれません。

仕組みは驚くほど合理的です。OpenClawは、ブラウザの中で動くウェブサービスではありません。あなたのPCやサーバー(VPS)の中に常駐するプログラムとして動作します。そして、WhatsApp、Telegram、Slack、Discordといった、あなたが普段使っているメッセージングアプリと連携します。

つまり、出先からスマホのLINE感覚で「あの資料を送って」と頼めば、自宅のPCにいるOpenClawが実際にファイルを探し出し、チャットで送り返してくれるのです。これまでのように「AIに文面を考えてもらう」だけでなく、「ファイルを整理する」「ブラウザで予約を取る」「コードを書いて実行する」といった実作業を代行します。

これは、私たちが長年SF映画で見てきた「コンピューターへの命令」そのものではないでしょうか。

なぜ「爆発的」に普及したのか?

OpenClaw(当時はClawdbot)が公開されたとき、GitHub(プログラムの設計図を共有するサイト)での評価を示す「スター」の数は、わずか3日で60,000を超えました。この数字は、通常なら数年かけて達成するようなマイルストーンであり、異常とも言えるスピードです。

なぜこれほどまでに熱狂的に受け入れられたのでしょうか。機能が優れているから? もちろんそれもありますが、私はもっと別の理由がある気がしています。それは、「新しい操作を覚えなくていいから」です。

新しいAIツールが出るたびに、私たちは新しい画面、新しい操作方法、新しい「プロンプトのコツ」を学習してきました。しかし、OpenClawのインターフェースは、あなたが毎日使っているWhatsAppやTelegramそのものです。

UI(ユーザーインターフェース)の学習コストが事実上「ゼロ」であること。これが、多くの人々が「これなら使える」と直感した理由ではないでしょうか。新しいアプリをインストールするのではなく、いつもの連絡先に「有能な部下」が一人増える感覚に近いのです。

「会話」が「実行」に変わる瞬間

では、具体的にどのような「実行」が可能なのでしょうか。あるユーザーが報告した事例が非常に象徴的です。

そのユーザーは通勤中に、スマホのWhatsAppから自宅のPCにあるOpenClawへこう指示しました。
「ダウンロードフォルダの中身を確認して、PDFファイルだけを『書類フォルダ』に移動し、内容を要約して教えて」

通常のAIチャットボットなら、「その操作はできません」と答えるか、あるいはシェルスクリプト(PCへの命令文)を書いて「これを自分で実行してください」と返すところです。

しかしOpenClawは違いました。
実際にPC内の47個のファイルをスキャンし、12個のPDFを見つけ出し、指定されたフォルダへ移動させ、最後にその内容を要約してWhatsAppに返信したのです。

ユーザーが満員電車に揺られている間に、自宅のPCではフォルダ整理という「実務」が完了していました。ここには、人間が介在する隙間がありません。これが「AIにPCを操作させる」ことの真価です。

「待ち」ではなく「攻め」のAI

さらに興味深いのは、OpenClawが「プロアクティブ(能動的)」であるという点です。

従来のAIは、私たちが話しかけるまで黙っていました。しかしOpenClawは、あらかじめ設定しておけば、向こうから話しかけてきます。「毎朝8時にカレンダーとメールを確認して、今日の予定をブリーフィングして」と頼んでおけば、あなたは朝起きてスマホを見るだけで、秘書からの報告を受け取れます。

また、特定の条件(例えば「サーバーがダウンした」「重要なメールが届いた」など)を検知して、即座に通知を送らせることも可能です。指示待ちではなく、自律的に動くエージェント。それがOpenClawの本質的な姿です。

さて、ここまで聞くと「夢のようなツール」に思えるかもしれません。しかし、PCを直接操作できるということは、裏を返せば「PCの中身を壊すこともできる」という強大な権限を持つことを意味します。便利さと危険さは常に隣り合わせです。

このあまりに強力なツールを、一体誰が作り、どのような経緯で世界中に広まったのでしょうか? 実はそこには、わずか数日の間に繰り返された改名騒動と、開発者のドラマがありました。次のセクションでは、その背景に迫ってみましょう。

開発者の正体とプロジェクトの変遷:数日で世界を席巻した背景

図解: 開発者の正体とプロジェクトの変遷:数日で世界を席巻した背景

前のセクションでは、OpenClawが「PCを直接操作できる強力な権限」を持つツールであることをお話ししました。ここで一つ、素朴な疑問が湧いてこないでしょうか。「そんな危なっかしいツールの鍵を、どこの誰とも知らない開発者に預けていいの?」と。

実は、このツールを使う前に開発者の背景を知っておくことは、単なるトリビア以上の意味があります。なぜなら、作り手の「素性」と「思想」を知ることで、私たちがこのツールにどれだけのリスクを許容すべきか判断できるからです。

どうやら、OpenClawの爆発的な普及の裏には、一人の天才的な開発者の存在と、まるで映画のようなトラブル続きのドラマがあったようです。

実務家が作った「実務家のためのツール」

抽出: 開発者の正体とプロジェクトの変遷:数日で世界を席巻した背景

OpenClawの生みの親は、オーストリアの開発者であるPeter Steinberger氏です。彼は単なる趣味のプログラマーではありません。PDF関連の技術を提供するPSPDFKitという会社を創業し、後に投資会社へ売却した実績を持つ、いわば「テクノロジーでビジネスを成功させた実務家」です。

ここが重要なポイントではないでしょうか。彼が作ったのは、研究室で論文を書くためのAIではなく、「日々の面倒なPC作業を終わらせるため」の道具だったのです。

彼自身が週末プロジェクトとして書き始めたコードが、まさか世界中の開発者を巻き込むことになるとは、最初は思っていなかったかもしれません。しかし、彼の実績を知る人々は即座に反応しました。「あのSteinbergerが作ったなら、実用性は本物だろう」と。この信頼感が、初期の熱狂を支える土台となりました。

名前が変わるたびに強くなった「ロブスター」

OpenClawという名前、実は3つ目の名前だということをご存知でしょうか? ここに、このプロジェクトの数奇な運命が詰まっています。

プロジェクトは当初、2025年後半に「Clawdbot」としてスタートしました。しかし、あまりにも注目を集めすぎた結果、AI界の巨人であるAnthropic社(Claudeの開発元)から商標に関する懸念を指摘されてしまいます。「Clawd(クロード)」と「Claude(クロード)」、確かに似すぎていますね。

そこで2026年1月27日、Steinberger氏はプロジェクト名を「Moltbot」に変更しました。「Molt」とは「脱皮」という意味です。彼は「ロブスター(カニやエビの仲間)の魂はそのままに、新しい殻を手に入れた」と表現しました。なかなか粋な例えだと思いませんか?

しかし、ドラマはここで終わりません。この改名の混乱に乗じて、旧名称のアカウントが何者かに取得され、暗号通貨詐欺に利用されるという事件まで発生しました。さらに、初期バージョンにはセキュリティ上の脆弱性も見つかり、まさに踏んだり蹴ったりの状況に陥ります。

普通なら、ここでプロジェクトは消滅していたかもしれません。しかし、コミュニティの反応は逆でした。「トラブルはあったが、このツールの便利さは手放せない」と、ユーザーたちが開発者を支えたのです。

最終的に、プロジェクトはよりオープンで中立的な「OpenClaw」という現在の名称に落ち着きました。まるで、何度も脱皮を繰り返して強くなるロブスターのように、このツールはトラブルを乗り越えるたびに、セキュリティと信頼性を強化していったのです。

たった3日で6万人が熱狂した理由

このプロジェクトの凄まじさを物語る数字があります。GitHub(プログラムの設計図を公開するサイト)での「スター(いいね!のようなもの)」の数です。

OpenClaw(当時のClawdbot)が公開されてから、なんとわずか3日間で60,000を超えるスターを獲得しました。その後も勢いは止まらず、現在では100,000を超えています。これがどれくらい凄いかというと、世界的に有名な企業のソフトウェアでも、これだけの数を集めるには数年かかることが珍しくありません。

なぜ、これほど短期間に世界を席巻したのでしょうか?

私は、世界中の人々が「チャット画面の向こう側で、本当に手を動かしてくれる誰か」を飢えるように待っていたからではないかと思うのです。AIとのおしゃべりにはもう飽きていて、「いいからそのファイルを片付けてくれ!」と叫びたかった人たちの前に、OpenClawが現れた。それが、この爆発的なヒットの正体な気がしてなりません。

この熱狂は、単にPeter氏個人の力だけでなく、コミュニティ主導のエコシステムへと進化しました。今では世界中の開発者が、OpenClawに新しい能力(スキル)を追加し続けています。

さて、開発者が信頼できる実務家であり、コミュニティの熱量も本物だとわかりました。では、具体的にOpenClawは私たちの代わりにどんな「仕事」をしてくれるのでしょうか? 次のセクションでは、彼らが実際にこなした驚くべきタスクの数々を見ていきましょう。

「会話」ではなく「実務」を代行する:OpenClawの具体的な仕事とスキル

図解: 「会話」ではなく「実務」を代行する:OpenClawの具体的な仕事とスキル

前のセクションで、OpenClawが世界中で熱狂的に迎えられた理由をお話ししました。どうやら、みんな「おしゃべり」よりも「仕事」をしてほしかったようですね。

ここで、少し視点を変えてみましょう。もしあなたが優秀なアシスタントを雇うとしたら、その人に何を求めますか?
素晴らしい企画書のアドバイスをくれることでしょうか。それとも、散らかったデスクトップのファイルを整理し、溜まったメールに返信し、来週の出張の手配を済ませてくれることでしょうか。

これまでのAI(例えばChatGPTなど)は、前者の「顧問」としては優秀でした。しかし、OpenClawは後者の「実務担当者」として設計されています。彼らには「口」だけでなく、PCを操作するための「手」があるのです。

具体的に、OpenClawが私たちの代わりにどんな実務をこなしてくれるのか、実際の事例を見ていきましょう。

ブラウザという「目」を持つ

抽出: 「会話」ではなく「実務」を代行する:OpenClawの具体的な仕事とスキル

OpenClawの凄さは、フォルダの中身をいじるだけではありません。私たちが普段見ているウェブブラウザを、彼らも操作できるのです。

例えば、フライトのチェックインのような作業を考えてみてください。航空会社のサイトに行き、予約番号を入力し、座席を選んで……という一連の流れは、単純ですが面倒です。
OpenClawは、ヘッドレスブラウザ(画面を表示せずに動くブラウザ)やChromeを制御する技術を使って、これらのサイトにアクセスし、ログインし、必要なボタンをクリックすることができます。

他にも、X(旧Twitter)のタイムラインを巡回してトレンドを要約させたり、特定のWebフォームにデータを入力させたりすることも可能です。

どうやら、OpenClawにとってインターネットは「読む場所」ではなく、私たちと同じように「操作する場所」になっているようです。

スキルは「業務マニュアル」

「でも、そんな複雑なこと、どうやって教えるの?」と不安に思うかもしれません。プログラミングが必要なのでしょうか?
実は、OpenClawに仕事を教えるのは、新しいスタッフに「業務マニュアル」を渡すのに似ています。

OpenClawの世界では、これを「スキル(Skill)」と呼びます。もともとはClaude Codeというツールが提唱して実装したものがスタートです。
スキルとは、Markdownというシンプルな形式で書かれたテキストファイルです。そこには、「このサイトを開く」「このボタンを押す」「この情報を抽出する」といった手順が、レシピのように書かれています。

さらに面白いのが、世界中のユーザーが作ったスキルが「ClawdHub」という場所に集まっていることです。
「Googleカレンダーを操作したい」「GitHubを監視したい」と思ったら、そこからスキルを検索して、自分のOpenClawにインストールするだけです。まるでスマホにアプリを入れるような感覚ですね。

もっと言えば、もし欲しいスキルがなければ、OpenClawに「こういうことがしたい」と相談すれば、AI自身が新しいスキルを作成してくれる機能まであります。業務マニュアルを、新人が自分で書いて覚えてくれるようなものです。

さて、ここまで読んで「便利そうだけど、設定が難しそう……」と感じた方もいるかもしれません。PCを操作させるなんて、黒い画面(ターミナル)とにらめっこが必要なのでは? と。

確かに、OpenClawは強力なツールですが、実は導入のハードルは驚くほど下がっています。次のセクションでは、エンジニアではない方でも迷わずに導入できる、最短かつ安全な「雇い方」について解説します。

非エンジニアのための最短導入ガイド:安全な「AI従業員」の雇い方

図解: 非エンジニアのための最短導入ガイド:安全な「AI従業員」の雇い方

前のセクションまでで、OpenClawがどれほど有能な「実務担当者」であるかを見てきました。では、実際に彼らをあなたのチーム(というか、あなたの生活)に迎え入れるにはどうすればいいのでしょうか?

「PCを操作させるなんて、プログラミングの知識がないと無理なのでは?」
「黒い画面(ターミナル)に暗号みたいなコマンドを打ち込むのは怖い」

そう感じるのも無理はありません。しかし、どうやらOpenClawの導入は、私たちが想像するよりもずっとシンプルで、かつ「人間臭い」プロセスのようです。
ここでは、エンジニアではない方が、迷わずに、そして何より安全にOpenClawを雇うための最短ルートをご紹介します。

最初のステップは「執務室」の用意から

まず、一番大切なことからお話しします。OpenClawを導入する際、いきなり普段使っているメインのPCにインストールするのは、あまりお勧めしません。
なぜなら、OpenClawはファイル操作やコマンド実行といった強力な権限を持つからです。見知らぬ(といっても優秀な)新人スタッフを、いきなりあなたの寝室や金庫がある部屋に入れるのは、少し勇気がいりますよね。

そこで、彼ら専用の「執務室」を用意してあげるのが、最も賢く、安全な雇い方になります。これには大きく分けて2つの方法があります。

1. クラウド上に部屋を借りる(推奨:VPS)

これが一番のおすすめです。インターネット上の仮想サーバー(VPS)を借りて、そこにOpenClawを住まわせます。
「サーバーなんて難しそう」と思うかもしれませんが、実はこれが非エンジニアにとって一番楽な方法かもしれません。

なぜなら、DigitalOceanなどのサービスが提供している「1-Click Deploy」機能を使えば、面倒なセキュリティ設定や環境構築がすべて完了した状態で、ボタン一つでOpenClawを立ち上げられるからです。
さらに、これには以下のようなメリットがあります。

  • 24時間365日稼働: 自宅のPCをつけっぱなしにする必要がありません。OpenClawは深夜でも働き続け、朝にはレポートを届けてくれます。
  • 安全な隔離: 万が一何かトラブルがあっても、自宅のPCやメインのデータには影響が及びません。
  • プロによるセキュリティ設定: ファイアウォールや通信の暗号化など、素人には難しい設定が最初から適用されています。

月額数ドル(コーヒー数杯分)のコストはかかりますが、安全と手軽さを買うと思えば安いものではないでしょうか。

2. 自宅の空き部屋を使う(専用ハードウェア)

もし家に使っていない古いノートPCや、Mac Miniなどが余っているなら、それをOpenClaw専用機にするのも良い手です。
これなら月額費用はかかりませんし、データが自宅の外に出ることもありません。ただし、24時間働いてもらうには電源をつなぎっぱなしにする必要がある点には注意が必要です。

「召喚の儀式」はコピペで終わる

執務室が決まったら、いよいよOpenClawを呼び出します。
「インストール」というと難しそうですが、やることはたった1行のコマンド(呪文)をコピー&ペーストするだけです。

MacやLinuxのターミナルを開き、以下のコマンドを貼り付けてエンターキーを押してください。

``bash
curl -fsSL https://openclaw.ai/install.sh | bash
`

これだけです。あとは画面に流れる文字を眺めているだけで、必要なプログラムが勝手にダウンロードされ、インストールされます。
インストールが終わったら、次は初期設定のウィザード(案内人)を呼び出します。

`bash
openclaw onboard --install-daemon
``

このコマンドを実行すると、OpenClawが「どのAIモデルを使いますか?(AnthropicやOpenAIなど)」「APIキーは持っていますか?」と質問してくるので、画面の指示に従って答えていくだけで設定が完了します。
どうやら、黒い画面への恐怖心は、この手軽さの前には不要だったようです。

スマホが「司令室」に変わる

設定の最後に、OpenClawは「どのチャットアプリで話しますか?」と聞いてきます。
ここで、あなたが普段使っているWhatsAppやTelegram、Discordなどを選ぶことができます。

例えばWhatsAppを選べば、画面にQRコードが表示されるので、それをスマホで読み取るだけ。これで連携は完了です。
この瞬間から、あなたのスマホのいつものチャット画面が、AI従業員への「ホットライン」に変わります。

「今日の予定を教えて」
「サーバーの調子はどう?」

通勤電車の中からでも、カフェからでも、友人にLINEを送るような感覚で、自宅やクラウドにいるOpenClawに指示を出せるようになります。新しいアプリの使い方を覚える必要すらありません。これが、OpenClawが爆発的に普及した理由の一つと言えるでしょう。

まずは「見るだけ」の仕事から

無事にOpenClawを雇うことができたら、さっそく仕事を頼みたくなりますよね。
でも、ちょっと待ってください。優秀な新人でも、最初から重要な判断を任せるのはリスクがあります。

最初は、ファイルを削除したり書き換えたりする権限は与えず、「読み取り専用」の仕事から任せてみるのが良いでしょう。
例えば、「毎朝のニュース要約」や「新着メールのチェック」などです。これなら、もしOpenClawが勘違いをしたとしても、大事なファイルが消えることはありません。

こうして少しずつ「彼らがどう動くか」を理解し、信頼関係を築いていく。その先にこそ、本当の意味での「自動化された生活」が待っているような気がします。

さて、信頼関係を築くと言っても、具体的にどうやって権限を管理すればいいのでしょうか?
最後のセクションでは、この強力な「AI従業員」を安全に使いこなし、リスクを完全にコントロールするための「信頼設計」について、より深く掘り下げていきたいと思います。

リスクを飼いならす:最強の権限を安全に扱うための「信頼設計」のロードマップ

図解: リスクを飼いならす:最強の権限を安全に扱うための「信頼設計」ロードマップ

前章までで、OpenClawを安全な「執務室(VPSや専用機)」に住まわせる準備は整いました。しかし、ここで最後の、そして最も重要な問いが残ります。
「彼らに、どこまでの権限(合鍵)を渡すべきか?」という問題です。

OpenClawは、あなたの代わりにメールを送り、ファイルを整理し、ブラウザを操作できる強力な権限を持っています。これは、優秀な秘書であると同時に、もし判断を誤れば、あなたの大事なデータを一瞬で消去したり、取引先に変なメールを一斉送信したりできる「破壊者」にもなり得ることを意味します。

どうやら、AIエージェントと上手く付き合うコツは、彼らの知能を信じることではなく、「まだ信用しきらないこと」にあるような気がしてきました。
ここでは、OpenClawという最強の権限を安全に飼いならし、徐々に信頼を広げていくための具体的なロードマップを提示します。

ステップ1:まずは「見習い期間」から始める

新入社員にいきなり金庫の鍵を渡す経営者はいませんよね。AIも同じです。
最初は「読み取り専用(Read-Only)」の権限だけで運用をスタートすることをお勧めします。

具体的には、OpenClawに対して「情報を取ってくる」仕事だけを任せます。

  • 「未読メールを要約して」
  • 「来週のスケジュールを確認して」
  • 「ダウンロードフォルダにどんなファイルがあるかリストアップして」

この段階では、OpenClawはファイルの中身を見たり、ウェブサイトを閲覧したりはできますが、ファイルを削除したり、メールを勝手に送信したりすることはできません。
実は、あるユーザーが3週間OpenClawを試した際も、最初は読み取り専用で運用し、リスクを最小限に抑えながらその能力の8割を享受できたという報告があります。

まずはこの「何も壊せない状態」で、彼らがどれくらい賢く、時にどんな勘違いをするのかをじっくり観察してみてください。

ステップ2:「ハンコ」を押すのは人間

「見習い期間」を経て、彼らの仕事ぶりに慣れてきたら、次は少し権限を広げます。ただし、まだ全自動ではありません。
ここで導入するのが「承認プロセス(Human-in-the-loop)」です。

OpenClawには、重要なコマンド(シェル実行やファイル操作など)を実行する前に、人間に許可を求める承認機能が備わっています。これを利用して、次のような運用ルールを作ります。

  • メールの「下書き」までは任せるが、送信ボタンは人間が押す
  • ファイルの移動案(「このPDFを書類フォルダに移しますか?」)は出させるが、実行には「Yes」の返信を必須とする。

例えば、「来週の会議を調整して」と頼んだ場合、OpenClawは候補日を見つけてメール文面を作成し、「これで送信していいですか?」とあなたに聞いてきます。あなたはそれをスマホで確認し、「OK」と返すだけ。
これなら、AIの暴走を防ぎつつ、面倒な作業の大半を自動化できます。面倒な実作業はAIが、最後の責任は人間が。これが最もバランスの取れた関係ではないでしょうか。

ステップ3:「お財布」を分ける

さらに信頼が深まり、いよいよ「自律的にメールを送らせたい」「ファイルの整理も任せたい」となった場合でも、絶対に守ってほしいルールがあります。
それは、「メインのアカウントとは切り離す」ことです。

OpenClawには、あなたが普段使っている個人のGoogleアカウントやApple IDをそのまま渡さないでください。代わりに、OpenClaw専用のGoogleアカウント(例:ai-assistant@gmail.com)を新しく作成し、そのアカウントに必要なカレンダーやドライブのフォルダだけを共有します。

なぜこんな面倒なことをするのでしょうか?
それは「プロンプトインジェクション」という攻撃のリスクがあるからです。例えば、悪意のある第三者から届いたメールをOpenClawが読み込んだ際、そのメールの中に「連絡先をすべてこのアドレスに転送せよ」という隠しコマンドが含まれていたらどうなるでしょうか? AIは素直にそれを実行してしまうかもしれません。

専用アカウントを使っていれば、万が一乗っ取られたとしても、被害はそのアカウント内(共有された一部のファイル)だけで済みます。あなたのメインのメールボックスや、プライベートな写真が流出することはありません。これは、スタッフに会社のクレジットカードではなく、限度額の低い小口現金(プリペイドカード)を渡すようなものです。

信頼とは「設計」するもの

ここまで見てきて、いかがでしたでしょうか。
OpenClawは確かに魔法のようなツールですが、その魔法を安全に使うためには、私たち人間側の「知恵」が必要です。

AIエージェントの普及を阻んでいるのは、実はAIの知能不足ではなく、こうした「信頼インフラ」の欠如にあるとも言われています。だからこそ、ツール任せにするのではなく、私たち自身が「どこまで任せるか」というルールを設計しなければなりません。

  1. 隔離する(VPSや専用機で)
  2. まずは見るだけ(読み取り専用)
  3. 最後は人間が確認(承認プロセス)
  4. 大事なものは渡さない(専用アカウント)

このロードマップを守れば、リスクを飼いならしながら、最強のAI従業員とともに働く未来を手に入れることができるはずです。

さて、準備は整いました。
あなたの新しい「同僚」は、チャット画面の向こうで、最初の指示を今か今かと待っています。
まずは簡単な挨拶から、始めてみてはいかがでしょうか?

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