広告やWebサイト、提案資料などの制作業務において、生成AIを利用して画像を作成する機会が増えています。しかし、販促担当者が生成AI画像を仕事で安全に採用するためには、「ツールが商用利用可能か」といったサービス規約の確認だけでなく、入力する参照素材の権限や、完成した画像に権利侵害がないかを確かめるプロセスを整えることが欠かせません。
本記事では、生成AIで画像を仕事に使う前に、サービスの利用条件、AIへ入力する参照素材の出所、そして出力された完成画像をどのように確認すべきかを解説します。ツール側の商用利用の許可と、第三者への権利侵害リスクを明確に区別し、安全に業務を進めるための具体的な記録の残し方について順を追って見ていきましょう。
商用利用の許可と権利侵害の確認を分ける

生成AIを使って作成した画像を広告やWebサイト、提案資料などの仕事で使う際、まず気にするのが「このツールは商用利用ができるか」という点でしょう。しかし、販促担当者が安全に業務を進めるためには、サービス側の「商用利用の許可」と、完成した画像による「第三者の権利侵害がないかの確認」を全く別のものとして捉える必要があります。
商用利用の許可とは、利用しているAIサービスの運営企業が、規約上ビジネス目的での出力を認めているかどうかの取り決めです。たとえば、Adobe Fireflyの公式FAQ(2026年5月13日更新)によれば、製品内で明示的に別途定められていなければ、β版の機能であっても商用プロジェクトに使用できると説明しています。βというラベルがついているだけで直ちに商用不可となるわけではありません。ただし、ツールとして商用利用が認められていることと、生成した画像が他者の権利を侵害していないことは別の問題です。
出力された画像を公開・利用して第三者の著作権や商標権などを侵害しないようにする責任は、原則として利用する側にあります。OpenAIの個人向け利用規約(2026年1月1日発効)では、AIへ入力するテキストや画像について、利用者が事前に必要なライセンスや許可を確保しなければならないと定めています。また、用途に応じて公開前に人間が確認するなどして、正確性や適切性を評価することも求められています。さらに法人向けのServices Agreementにおいても、入力するデータの権利を保持していることや、出力結果を評価することは顧客側の責任とされています。個人向けの有料プランに加入していることと、法人向け契約の保護を受けることは同一ではありません。
一部のサービスでは、第三者から権利侵害の主張を受けた際の補償制度を設けていますが、これも無条件ではありません。2026年4月23日発効のAdobe生成AI製品別規約に定められたFireflyの補償では、対象となる契約や機能に条件が設けられています。たとえば、利用者が生成画像を後から改変した場合や他の素材と併用した場合、規約違反があった場合、あるいは入力した非テキストの素材自体が侵害の原因であった場合などは補償の対象外となります。そのため、商用利用が可能であることと、トラブル時に補償が適用される条件を満たしているかどうかも、それぞれ分けて確認しておかなければなりません。
業務に当てはめる架空の設計例として、小規模メーカーの販促担当者が新商品の卓上ライトを紹介するWeb広告用画像を作る場面を想定します。担当者は、利用するAIツールが商用利用可能なプランであることを確認したうえで作業を始めますが、それだけで全てが許されるわけではありません。AIへ参照用に入力する画像が「自社で撮影した写真」なのか、「ネットで見つけた他社の広告」なのかによって、他者の権利を侵害するリスクや送信権限の有無は大きく変わります。
また、完成した画像に実在する他社製品やキャラクター、既存の作品と共通する表現が含まれていないかを、公開前に人の目でしっかりと確認します。「AIツールが商用利用可だから」「AIのチャット画面で質問したら問題ないと言われたから」といった理由を、権利侵害がないことの根拠にしてはいけません。
まずは、サービスの利用規約に従って正しく商用利用の許諾を得ること。そしてそれとは独立して、入力する素材に権限があるか、完成した画像が他者の権利を侵害していないかを自社で確認するプロセスを設けることが、仕事で生成AI画像を扱う第一歩となります。
参照素材は入手先と許諾範囲へ戻る

生成AIで思い通りの画像を作るために、文章(プロンプト)だけでなく、構図や画風を指定する「参照画像」を入力することがあります。このとき、入力する画像自体をどのように入手したか、AIへ送信して改変する権限を持っているかを、元の入手先へ戻って確認しなければなりません。
著作権法第63条では、著作権者から利用の許諾を得た場合でも、その利用は「許諾に係る利用方法及び条件の範囲内」に限られると定めています。また、文化庁が2024年7月31日に公表したAIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンスでは、業務利用におけるリスク低減策として、画像入力が「情報解析」に該当し得る処理であっても、元作品に類似する生成物を作るという享受目的が併存しているならば、権利者の許諾なく利用できる例外規定(第30条の4)が適用されない場合があると説明しています。
さらに、2024年3月15日の文化審議会による考え方(法的拘束力のない解釈整理)を踏まえると、入力した画像をAIが分析して一旦文章の指示に直す工程を挟んだとしても、利用者の目的や、出力された画像に残る創作的表現の共通性が消えるわけではありません。「分析という機能を通すから他人の作品をそのまま入力しても問題ない」と一律に判断するのは避けるべきです。
では、広告画像の制作を担当する販促担当者が、3つの画像候補(自社撮影の商品写真、制作会社から納品されたイラスト、ネットで見つけた他社の広告)を参照素材として検討する架空の事例で考えてみましょう。
まず、自社で撮影した商品写真について、「自社の商品が写っているから」という理由だけでそのまま入力してよいとは限りません。撮影したカメラマンとの契約で外部AIサービスへの送信権限が認められているか、背景や写り込んだ人物の権利、秘密情報が含まれていないかを確認します。自社の利用環境における学習利用の拒否設定やNDAなどの外部送信条件については、会社データと生成AIの法務チェックに関する別の記事も参照し、出力結果とは分けて判断します。
次に、過去に制作会社から納品された既存イラストです。これも「制作費を支払って買い取ったから」と担当者が思い込んでいても、AIへの入力や改変、再利用が許可されているとは限りません。必ず元の契約書や利用条件へ戻り、AIを用いた今回の用途が含まれているかを確認します。もし未確認であれば、権利確認ができるまで保留や差し戻しを行います。
最後に、ネットで見つけた他社の広告画像ですが、Web上で公開されているからといって、自社の生成AIへ参照素材として入力する権限があるとは推定できません。他者の著作物を無断で入力して創作的表現の再現を指示することは、前述の文化庁のガイダンスに照らしても権利侵害のリスクを高めます。
このように、参照素材を利用する際は、入手時の契約や条件に立ち返り、使えることを明確に確認できた素材だけに絞ってAIへ入力することが、後々のトラブルのリスクを減らすための手順となります。
完成画像は公開する用途に合わせて確かめる

生成AIで画像を出力できたとしても、それを社内の企画会議で参考資料として見せるだけなのか、Web広告として外部に広く公開・配信するのかによって、確認すべき条件は異なります。前述した文化庁のガイダンスでは、社内での検討などのために画像を生成できる場合であっても、それを配信や譲渡といった形で利用する段階では、権利侵害にならないか別の判断が必要になると説明されています。完成した画像を仕事で公開する前には、具体的な用途に合わせて第三者の権利を侵害していないかを確かめなければなりません。
最初に確認するポイントは、著作権の侵害にあたる既存作品との「類似性」と「依拠性」です。担当者は、公開前の画像が他者の作品と似ていないかを、文章検索や画像検索などを活用して調べます。ここで問題となる類似性とは、元の作品の「表現上の本質的な特徴」を直接感じ取れるかどうかを指します。単に抽象的な作風やアイデアが共通しているだけでは類似性があるとはみなされませんが、完全なコピーでなくても創作的な表現が共通していれば、類似していると判断される可能性があります。また、画像や特定の固有名詞を入力した履歴、元作品へのアクセスといった事実を踏まえ、既存作品に基づいて作られたという依拠性がないかもあわせて評価されます。
著作権に加えて、肖像権や商標権の確認も重要です。2026年8月の法務省検討会による報告書の解釈整理では、肖像の商業的価値を守る「パブリシティ権」と、精神的価値を守る「人格的利益」を区別して整理しています。本人の写真を入力せず、AIを使って偶然似た肖像が作られた場合であっても、顔の造作だけでなく付加情報などを総合して本人が識別されれば、権利の問題が残り得るとされています。特に広告などで、専らその人物の顧客吸引力を利用するような用途では注意が必要です。また、画像内にロゴなどが生成された場合も、商標の登録状況や指定商品、使用態様などを個別に確かめなければなりません。ただし、似た人物やロゴが存在するというだけで、直ちにすべての画像が権利侵害と断定されるわけではありません。
これらの条件を、先ほどの小規模メーカーにおける卓上ライトのWeb広告案件に当てはめてみましょう。担当者は、商品の事実をAIに渡して複数の背景案を作らせた後、完成した画像を人の目で確認します。商品の形状が正しく保たれているかはもちろん、背景に実在の企業のロゴや不自然な文字が入り込んでいないか、生成された人物が実在の有名人などに似ていないかをチェックします。不安がある場合は画像検索などで既存作品を調べます。
もし、既存作品と共通した表現が見つかり、プロンプトで修正を指示しても懸念を解消できない案があれば、その画像は保留して別の素材や案を検討します。AIのチャット画面で「この画像は公開しても問題ありませんか」と尋ねて得られた回答を、許諾や安全性の確認根拠にしてはいけません。自社の公開用途に合わせ、人が責任を持って権利侵害のリスクを確かめるプロセスが不可欠です。
生成過程と確認結果を納品まで残す

生成AIを使って作成した画像を採用し、いざ公開や納品へ進む段階で重要になるのが、「どのように生成し、どうやって安全性を確かめたか」という過程を記録に残しておくことです。文化庁のガイダンスでは、著作物としての取引などにおいて、可能な非侵害確認措置を行ったことを説明可能にする取り組みが挙げられています。特に、どのような指示文(プロンプト)を用いたかといった生成過程を確認可能にしておくことが推奨されています。こうした記録は、既存の作品に基づいて作った(依拠した)ものではないことや、利用者が画像にどのような創作的寄与を行ったかを説明するための材料になります。ただし、このガイダンスに公的な承認様式はなく、類似作品が検索で出なかったことや記録の存在自体が、無侵害の保証になるわけではないことには留意が必要です。
また、生成過程の記録は、出力された画像に対して自社が著作権を主張できるかの判断にも関わります。文化審議会の考え方では、AI自体は著作者にならず、利用者の創作的な寄与が具体的に評価されます。創作的表現を示す指示や、出力確認と指示修正を組み合わせた試行、選択と創作行為の関係などが総合的に見られます。長い指示文の入力や多数回の試行、単純な選択だけで自動的に著作権が発生するわけではありません。人が創作的に加筆した部分は通常保護され得ますが、それが未修正の画像全体の保護を直ちに決めるわけではないため、人がどこまで関与したかを辿れるようにしておく意義があります。
これまでの卓上ライトのWeb広告案件における架空の設計例で、担当者が具体的にどのような記録を残すかを見てみましょう。担当者は、画像ファイル単体ではなく、素材の出所と許諾を得た証拠、利用したサービスの正確なプラン名と選択した生成モデル、β表示の有無、公開予定の用途、規約確認日などを対応付けてまとめます。さらに、AIへ商品の事実を渡したプロンプトと修正履歴、類似確認などを行った日と確認者、公開先も記録します。既存作品との共通点を解消できずに保留とした案があれば、その保留理由も明記します。
担当者は、このように必要な条件がすべて確認できた画像案と、その根拠となる記録をセットにして社内の承認を受けます。未確認の既存イラストなどは権利確認へ差し戻し、懸念を解消できなかった画像案は別素材や別案の検討へ回して決裁ルートには乗せません。このような記録の仕組み自体が適法性を完全に保証するものではありませんが、万が一後から第三者から問い合わせがあった際や業務を引き継ぐ際に、担当者が何を根拠に公開可能と判断して進めたかを客観的に振り返ることができる設計案です。生成から確認までの過程を納品まで確実に残すことが、仕事で生成AI画像を扱うための土台となります。
よくある質問
Q1. AIのチャット画面で「商用利用しても問題ありませんか」と質問し、「問題ありません」と回答されました。これを権利許諾の根拠にしてよいでしょうか?
AIからの回答を、権利許諾や安全性の根拠にするべきではありません。利用規約において、入力に必要な許可を事前に確保することや、公開前に人間が正確性や適切性を評価することは利用者の責任とされています。完成した画像が他者の著作物や実在のロゴなどを侵害していないかは、AIのチャット回答に頼るのではなく、公開先や用途に合わせて担当者が人の目で確認しなければなりません。
Q2. β(ベータ)版の生成AI機能で作成した画像は、仕事のプロジェクトで使ってはいけないのでしょうか?
「β版だから」という理由だけで、一律に商用利用が不可となるわけではありません。製品内で明示的に制限が設けられていなければ、β版の機能で生成した画像であっても商用プロジェクトに利用できるとするサービスもあります。まずは、利用しているツールの公式FAQや規約へ戻り、対象の機能やモデルに対する個別の制限がないかを確かめることが重要です。
Q3. 生成した画像を利用して第三者から権利侵害の主張を受けた場合、AIサービスの運営企業が補償してくれますか?
補償制度を設けている法人向けサービス等もありますが、常に無条件で適用されるものではありません。特定の契約プランのもとで、利用者が画像を後から改変した場合や、他の素材と併用した場合、規約違反があった場合、あるいはAIへ入力した参照画像自体が権利侵害の原因であった場合などは、補償の対象外となる規定が見られます。商用利用が許可されていることと、万が一の際に補償の条件を満たしているかは、分けて確認しておく必要があります。
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