国内市場で見つけた需要を、海外でも期待できるでしょうか。AIに国内外の市場規模を並べてもらうと、数字はすぐ表にまとまります。しかし、調査する国が変われば一次資料の置き場所も変わります。制度名、検索言語、統計の定義も同じではありません。
国内企業なら、日本語の法人名から政府統計や開示資料へ進めます。海外企業では現地の法人識別子や開示制度を先に確認するため、英語のレポートを訳しただけでは二つの数字を同じ条件で比べたことになりません。
ここで比較するのは、国内情報を主対象にする調査と、国外情報を主対象にする調査です。AIツールの国籍や日本語性能の順位、有料データベースの価格、現地インタビューの方法は対象に含めません。
国内AIリサーチと海外AIリサーチは調査対象で分ける
国内AIリサーチを国産AI、海外AIリサーチを海外製AIと考えても、調査手順の違いを説明できません。ChatGPTで日本の政府統計を調べることも、日本のサービスから米国企業の開示を調べることもできるからです。
ChatGPTのDeep Researchでは、公開Web、特定サイト、添付ファイル、接続済みアプリから情報源を選べます。調査計画を確認し、途中で範囲を変え、引用付きレポートを受け取る機能です。
GeminiのDeep ResearchもGoogle検索だけでなく、添付ファイルや接続済みのGoogleサービスを情報源にできます。同じ製品でも、指定する資料と検索語を変えれば国内外の両方を調べられます。
同じAIを使い続けても構いません。国内では日本語の制度名と法人名から一次資料へ進み、海外では国別の制度、法人識別子、現地語の分類名を先に確定します。この検索経路の違いが、後の比較精度を左右します。

国内調査は日本語の制度名から一次資料へ進む
国内市場の規模や人口動態を調べる場合、政府統計の総合窓口で資料を探せます。e-Stat APIの機能概要には、統計表情報、メタ情報、数値データをXMLやJSONで取得できると記載されています。
AIへ数値を渡すときは、表の数字だけをコピーしません。統計表ID、調査名、対象期間、分類事項、取得日も同じファイルに残します。後から別の国の統計と比べる際、数字の意味を確かめられるようにするためです。
上場企業の開示では、金融庁のEDINETに関する案内から制度と閲覧先を確認できます。AIが挙げた社名をそのまま検索するのではなく、提出者名、書類種別、対象年度を実画面で照合します。
国内資料は日本語で読めるため、翻訳による意味のずれを避けやすくなります。ただ、同じ市場規模でも生産額、出荷額、販売額、利用者支出は別の指標です。日本語で読める資料でも、比較条件は個別に確かめます。

海外調査は国ごとの制度と統計定義を先に確かめる
国内では制度名を日本語のまま追えました。海外へ対象を広げると、企業開示や政府統計に対応する制度と識別子を国ごとに探す作業が加わります。
米国上場企業なら、証券取引委員会のEDGARが開示資料の入口です。EDGAR APIの公式説明では、提出履歴と、財務項目をタグで識別するXBRLデータをJSONで取得できます。
海外企業は、英語名だけでは同名企業や子会社を取り違える場合があります。SECが各提出者へ付与するCIK、提出主体、Form 10-Kなどの書類種別を保存します。この三つを使い、AIの要約を原本へ結び付けます。EDGARデータへのアクセス案内では、提出書類とインデックスの取得経路も確認できます。
EU市場の統計は、Eurostatのデータベースから探せます。表を見つけたら数字だけを抜き出さず、対象企業、地域範囲、基準年、改定方針を説明するメタデータを先に読みます。
企業動態統計のメタデータには、統計概念、地理範囲、品質管理などが記録されています。国内統計と同じ列名に変換できても、集計対象が違えば、その数値差を市場差とは判断できません。
Webで得られる情報だけでは、現地の販路や商習慣まで確定できない場合があります。ジェトロの海外ミニ調査サービスのように、現地事務所が統計、制度、店舗、企業情報を調べる経路もあります。AIで未確認項目を絞り、必要なものだけ現地確認へ渡します。

同じ表へ並べる前に比較条件をそろえる
国内外の一次資料へ到達しても、まだ数値は横並びにできません。資料ごとに定義と更新条件が違うからです。まず出典主体、対象地域、対象期間を記録します。続けて単位、通貨、名目・実質、改定日を残します。
企業比較では、法人の正式名、親子会社の関係、証券コードやCIKも必要です。売上高を比べる場合は、連結と単体、会計年度、為替換算日をそろえます。AIへ「同じ項目名に整形して」と頼むだけでは、この差は消えません。
検索言語も分けます。国内は日本語の制度名、業界団体名、法人名を使います。海外は英語に加え、現地の制度名、製品分類、行政機関名を検索語へ入れます。英訳した日本語キーワードだけでは、現地企業が使う分類語を外すことがあります。
私なら、比較表の数値に「比較可能」「参考値」「比較不可」の札を付けます。比較不可の数字も消しません。対象や期間の違いを残すと、次に探す資料が見えてくるからです。

国内の仮説を海外の一次資料で反証する
国内で需要が伸びた製品用途を、海外でも展開できるか判断する場面です。事業企画の担当者が、候補国AとBのどちらを追加調査へ進めるか決めます。
事前仮説は「国内で伸びた用途が候補国Aでも伸びている」です。必要な証拠は、同じ用途分類に近い需要統計、競合企業の開示、対象地域の制度変更です。候補国Aの統計定義が国内と対応しない場合、または競合開示が需要減を示す場合を反証条件にします。
e-Statの国内需要データ、EDINETの国内競合資料、EDGARの海外競合資料、Eurostatの国別統計をCSVまたはPDFで保存します。ファイル名には出典主体と取得日を入れ、個人情報と未公開情報を除きます。
ChatGPTで新しいチャットを開き、Deep Researchを選びます。保存したファイルを添付し、参照先としてe-Stat、金融庁、SEC、Eurostatの公式ドメインを指定します。ログイン中の有料データベースをAIが自動で読めるとは想定しません。
入力欄へ次の依頼文を貼り付けます。
候補国AとBのどちらを追加調査へ進めるか決めます。仮説は「国内で需要が伸びた用途が、候補国Aでも伸びている」です。
各数値について、対象と期間を示してください。単位、通貨、更新日も併記してください。仮説を支持する証拠、反する証拠、比較できない数値、未確認項目を分けてください。
公式資料以外を使う場合は理由を記し、最後に現地へ確認する質問と、現時点の候補国の優先順位を示してください。
AIの出力では、仮説を支持する証拠と反する証拠を分けます。比較できない数値、未確認項目、現時点の判断も別欄にします。人は各引用を開き、数値、表題、基準日、法人同一性を原典で照合します。
分析後の判断は、候補国Aを追加調査へ進める、候補国Bを保留する、または両方を見送る、のいずれかです。判断を変えた証拠と、なお未確認の条件を一緒に残します。

AI調査から現地確認へ移る条件を決める
AIは公開資料の候補を集め、異なる資料の定義差を見つけ、反証候補を並べる作業に向きます。既存の表計算だけでも列の整形や条件絞り込みはできます。AIを使う理由は、複数資料の意味を照合し、仮説を退ける条件を探す点にあります。
人が確認するのは、引用先の原文、統計のメタデータ、法人同一性、更新日です。海外資料を訳す場合は、契約、規制、会計用語の原語も残します。日本語の要約だけを証拠として社内判断へ回しません。
店頭での扱い、非公開の商流、交渉慣行、消費者が製品を選ぶ理由は、公開Webだけでは判断しにくい情報です。これらが優先順位を左右する段階になったら、現地インタビューや専門家確認へ移ります。
AI調査で現地調査そのものをなくすことはできません。AI調査では、現地で聞く相手と質問、確認すべき仮説を絞ります。公開資料で反証された候補を先に外せば、現地確認を残った論点へ集中できます。
使うサービスを選ぶ段階では、AIリサーチエージェントを業務別に比べた記事が判断材料になります。仮説から反証条件を作る業界別の例は、食品・飲料業界の市場調査AI活用で確認できます。
よくある質問
Q1. 国内調査なら日本企業のAIを選ぶべきですか?
開発国だけでは決められません。必要な日本語資料を指定できるか、引用から原典へ戻れるか、契約条件が自社に合うかを確認します。
Q2. 海外調査は英語だけで十分ですか?
英語で公開される一次資料が中心なら進められます。ただし、現地制度や消費者向け情報が現地語だけで公開される国では、現地語の検索語と確認者が必要です。
Q3. AIが出した市場規模はそのまま比較できますか?
そのままでは比較できません。対象、期間、単位、通貨がそろっているかを確認します。名目・実質と改定日も異なるなら、参考値または比較不可に分けます。
Q4. どの段階で現地調査へ移りますか?
現地調査へ移るのは、公開資料だけでは販路、商習慣、購買理由を確定できず、その未確認項目が候補国の優先順位を変える段階です。AI調査で質問を絞ってから現地へ確認します。
Q5. 国内と海外を一つのAIで調べてもよいですか?
一つのAIで調べられます。ただし、国内用と海外用で検索語と指定ドメインを分けます。法人識別子と統計メタデータも別々に保存し、最後に比較条件をそろえて統合します。
調査手法について
こちらの記事はグラフAIリサーチプラットフォームのSnorbeを使って作られています。Snorbeは研究開発・新規事業向けの調査テーマに応じた幅広い項目のオートリサーチや、ナレッジグラフの構築、構造化レポートの生成ができるAIリサーチツールです。

Screenshot
調査したいテーマを入力するだけで、AIが深堀りすべき観点や広げるべき調査項目をレコメンドしながら、自動でリサーチを進めます。収集した情報はナレッジグラフとして蓄積され、未調査領域(ホワイトスペース)を可視化しながら調査の網羅性を高めていけます。
また、観点マトリクスを30秒・構造化レポートを10分で自動生成する機能があり、出典付きのレポートをMarkdown/PDF形式でエクスポートできます。調査の元データも保存されるため、ファクトチェックや社内共有も容易です。
ご利用をご希望の方は、こちらよりお申し込みください。
また、グラフAIを活用した社内ナレッジ管理や、研究開発・新規事業のリサーチ支援、セルフホスト導入のご相談も受け付けています。お困りの方はお気軽にご連絡ください。
市場調査やデスクリサーチの生成AIエージェントを作っています 仲間探し中 / Founder of AI Desk Research Agent @deskrex , https://deskrex.ai


コメント