ホンダの車両設計とADASへの生成AI・LLM活用とUI/UXの未来

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自動車業界では、電動化の潮流に加えて、ソフトウェアとAI技術の重要性が高まっています。ホンダは、この両面で先行して取り組みを進めており、2030年までに世界中で30種類のEVモデルを投入する計画とともに、LLM(Large Language Model)や生成AIなどのAI技術を積極的に活用しようとしています。

画像生成AIやLLMの活用により、自動車デザインや自動運転システムの革新が進んでおり、製造プロセスの改善やコスト削減、生産性向上、製品品質の向上が期待されています。

ちなみに、自動車市場における生成AIの規模は、2032年までに年平均24.03%のCAGRで成長し、約27億ドルに達する予測されています。これには、車両デザイン、製造の最適化、輸送と物流、自動運転、ADASなどがユースケースの対象となっています。

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盛り上がりが想定される中で、自動車は命に関わる産業であるため、技術導入に伴うリスクや課題も存在することは明らかです。しかし、自動車メーカーは生成AIで競争力を高める戦略展開を行っており、新たな価値を創造し、顧客により良いモビリティ体験を提供しようとしています。

ホンダは、販売後も顧客にさまざまなサービスと価値を提供し続けるリカーリングビジネスに焦点を移し、ビジネスポートフォリオを変革することを目指しています。今後10年間で、電動化とソフトウェア技術の分野に約5兆円を投資する戦略の中で、どのように生成AIやLLMを活用するのか、解説していきます。

 ✍️ 要点

  • 社内利用から始め、エンジニアの再教育、外部との協力を重視する5つの戦略を実行しています。
  • 画像生成AIにより、車両設計や自動車デザインの革新が進んでいます。
  • VLMsとLLMsの組み合わせにより、自動運転技術の向上や遭難検知などの高度な行動認識が可能になります。

ホンダにおける社内の生成AI活用

アメリカホンダは、IT担当のBob Brizendine氏がリードする形で、生成AIの5つの戦略を実行しています。

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  • 公開バージョンのツールをどう扱うか決める。
  • 機能を社内に導入する。
  • よりカスタマイズされた機能を必要とする部門を特定する。
  • 生成AIを効果的に使用するために、社内の開発者を再教育する。
  • ソフトウェアサプライヤーと協力し、生成AIを統合するためのロードマップを理解する。

生成AIの戦略を実行する際、リスク管理や従業員教育に重点を置きながらも、着実に従業員に生成AIツールの利用方法を教育しロードマップを引くことを重視しています。

ちなみに、過去には生成AIではないですが、ホンダはAIを活用して特許の検討プロセスを効率化する取り組みも進められていました。AIは、特許ポートフォリオを管理し、市場、競合他社の技術との特許の関係、革新のレベルをレビューし、特許の維持または放棄のための支払い期限に直面する際に総合的な意思決定を行います。

現在は、生成AIを組み合わせてさらに柔軟な特許管理を実現できている可能性もあります。

成功している他社と同様に、まず社内利用、そして社内エンジニアと部署連携、外部専門家とのロードマッピングが鍵となっています。

車両設計における画像生成AIの活用とUIの未来

ホンダは、日本モビリティショーで画像生成AIに影響を受けたコンパクトEV「Sustaina-Cコンセプト」を発表しました。また、ホンダはStability AIによるAIツールであるStable Diffusionを活用して、展示会の参加者がスマートフォンで車両をデザインできるようにするデモを実施しています。

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ディープラーニングモデルを使った生成AIは、テキストや画像などのコンテンツを自動生成できるため、車両設計やマーケティング分野での活躍が見込まれます。

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生成AIによるデザインの有用性は、インターフェースをユーザーの好みに応じて変化させることができる点にあります。チャットのように、情報の受け渡し方を変えるだけではなく、ソフトウェアの領域ではウェブサイトを動的に生み出すことも事例として出てきています。

ハードウェアの外装レベルで動的なカラーリングやデザイン変更を行うことができる未来もあるでしょう。

ホンダにおけるVLMs・LLMsとADASの研究事例

さらに、ホンダの合弁会社ソニーホンダモビリティでは、LLMを使った自動運転システムやADAS(先進運転支援システム)の開発を進めています。2025年にEV車種「Afeela」を発売する予定で、LLMの導入によりソフトウェア開発の効率化を図ります。

ちなみにホンダアメリカでは、インターンポジションで、VLMsとLLMsによるビデオ内の人間の行動を分析するアルゴリズムの研究の人員を募集しており、遭難検知にユースケースを探索していることがわかります。

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(翻訳した要件テキストを記載)

VLMsとLLMsを使用した人間の行動理解

このプロジェクトは、ビデオでの人間の行動と活動を認識、解釈、予測するためのコンピュータビジョンと機械学習アルゴリズムの研究と開発に焦点を当てています。特に、遭難検知の検出に重点を置いています。

職務内容

  • インターンシップ期間中、以下のことを期待されています:
    • VLMsとLLMsを使用した人間の行動理解と異常検出のためのコンピュータビジョンと機械学習アルゴリズムの開発
    • 結果の評価のためのベンチマークデータセットの開発のサポート
    • 提案されたアルゴリズムの信頼性を検証するためのメトリクスの開発と評価
    • 研究価値を示す特許、学術出版物、プロトタイプのポートフォリオへの貢献

最低限必要な資格

  • コンピュータサイエンス、電気工学、または関連分野のPh.D.または高度なM.S.候補者
  • コンピュータビジョンと機械学習の強力な研究経験
  • ビデオと人間の行動理解の実務経験
  • 言語とビジョンの交差点での問題の対処経験、特にVLMsとLLMsの使用
  • TensorFlowまたはPyTorchなどのオープンソースのディープラーニングフレームワークの経験

あると素晴らしい資格

  • ゼロショット学習
  • 異常検出と分布外検出
  • アクションセグメンテーション、アクション検出、またはアクション予測を含むビデオ理解の実務経験
  • トップティアのカンファレンス(CVPR、ICCV、ECCV、ICML、NeurIPS、ICLRなど)での出版

VLMsは、Vision Language Modelsの略で、テキストと画像を同時に処理および理解して、視覚的質問応答 (VQA)、画像キャプション、テキストから画像への検索などの高度な視覚言語タスクを実行できます。ちなみに、完全自動運転を目指す日本のスタートアップTuringも独自のVLMsを開発しています。

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もともとライン検知や自動運転の技術には画像認識が必要な領域です。ホンダでいうと、自動車が生産ラインを通過する際に、欠陥や異常がないかをチェックすること機構をUVeyeというスタートアップと連携して実現しています。ちなみに、UVeyeは、Honda Xceleratorプログラムを通じて協力している企業です。

monolithai.com

Soraの発表もありましたが、生成AIのマルチモーダルモデルの性能向上も著しく、産業活用がさらに水面下で進んでいることが伺えます。

車両のADASや自動運転システムは、センサーやカメラ、通信システムを介して車両に関する大量の情報を収集します。そのため、データは即座に処理され、近くの車両や歩行者の動きを予測する必要があります。 自動運転向けのLLMの採用は、VLMsの性能向上に伴って、検知技術の向上と市場浸透をさらに加速させるでしょう。

ちなみに、生成AIはナビゲーションとも相性が良いため、カーナビゲーションシステムへの埋め込みの事例も時期に出てくると思われます。

このように、ホンダは社内活用から製品開発、そしてマーケティング戦略に至るまで、あらゆる側面で生成AI・LLMを利用しようとしています。

自動車メーカーに限らず、ハードウェアメーカーにおいては、UIにおける生成AIによるパーソナライズの未来と、ハードウェアの性能向上やUXの自動化の観点で、どのように生成AIを活用するかが問われています。

調査手法について

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