ファイザーと生成AIによる製薬マーケティングと医薬品開発の効率化

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世界最大の製薬会社の一つであるファイザー。このファイザーが、製薬業界においてGenerative AIを活用するためにプラットフォーム「Charlie」を開発して実験的な取り組みを進めているというニュースが話題になりました。

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今回は、ファイザーの生成AIプラットフォーム「Charlie」の活用事例から、製薬業界におけるAI活用の可能性について探っていきたいと思います。

✍️要点

  • ファイザーはAIプラットフォーム「Charlie」を開発し、コンテンツ供給チェーンの改善やマーケティング戦略の強化に活用しています。
  • Charlieはコンテンツの作成や編集、データ分析、パーソナライゼーションを支援し、マーケティング組織全体の作業スペースとして機能しています。
  • AI/MLに加えて生成AIの活用により、薬の発見や開発プロセスを加速し、薬の提出プロセスをさらに改善することが可能となります。

ファイザーのマーケティング戦略と生成AIプラットフォーム「Charlie」

ファイザーは、共同創業者にちなんで名付けられた生成AIプラットフォーム「Charlie」を開発し、コンテンツ供給チェーンの改善やマーケティング戦略の強化に活用しています。ちなみに、Publicis GroupeがMarcel AIを使って構築を支援したようです。

Charlieはコンテンツの作成や編集、データ分析、パーソナライゼーションを支援し、マーケティング組織全体の作業スペースとして機能しています。

ファイザーの生成AI戦略の1つ目の焦点は、マーケティングや社内コンテンツ供給の改善にあります。

Charlieはコンテンツの作成、編集、ファクトチェック、法的レビューを支援しますが、特に医薬品マーケティングのような高度に規制された産業では特に重要です。Charlieはコンテンツをラベル付けする際に「赤、黄、緑」のリスクシステムを使用し、医学レビューチームにより関連性や重要性の高いと思われるソースを特定できるように支援します。

2つ目の焦点は、会社のブランドのメディア分析、さまざまな競合他社に関する洞察、さまざまな Web サイトからのデータの統合などのマーケティング組織全体の生産性向上です。

Charlieは、WorkfrontやExperience ManagerなどのAdobeプラットフォームに統合され、さまざまなダッシュボードを通じてインサイトに基づいた行動を支援します。その他の機能には、Slackなどの他のプラットフォームとの統合が含まれ、従業員のコミュニケーションと協力を支援します。

さらに、3つ目として、専門性の高い治療分野の情報を網羅的に把握し、営業資料や医学論文の作成支援などの活用法も検討しているそうです。

製薬業界におけるデータ活用は、他の産業よりもはるかに慎重さが求められますが、Charlieは各治療カテゴリー (腫瘍学、内分泌学など) および特定の製品ごとに登録された承認済みコンテンツからのトレーニングされているようです。ハルシネーションを防ぐために、AIからの回答の前にファイザーのコンテンツに基づくソース資料で検証されます。

ちなみに、直近だとGenerative AI Medical Engagement Leadという職種の採用募集をかけており、医療領域で横断的にAI戦略を立てる組織を組み立てようとしていることがわかります。

この役割は、グローバルメディカルカテゴリー、Pfizer Digital、および他のクロスファンクションステークホルダーと密接に連携し、ファイザーの治療領域である腫瘍学、一次医療、専門医療、ワクチンにおけるAIの科学を進める戦略とイニシアチブをリードするとのことです。

ファイザーの製薬プロセスへの生成AIの活用

ちなみに、ご存じの方も多いと思いますが、従来からAI/MLの領域では製薬研究においてAIの実践は進んできています。

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例えば、AIスタートアップのExscientiaは、創薬にかかる時間を4年半からわずか12か月に短縮でき、創薬コストを80%削減できると主張しています。大手製薬会社も、AIスタートアップやテクノロジー企業と提携してAIを活用しています。例えば、アストラゼネカやノバルティスはマイクロソフトと、BayerやGSK、SanofiはExscientiaと協力しています。

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また、ファイザーは機械学習をCOVID-19の治療薬の分子の最適化や排水から感染率を分析することに役立ててきました。

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他にも、ファイザーはAIの活用を下記のユースケースでも言及しています。

  • AIは科学的な突破口をもたらし、疾病の診断、治療、管理を支援し、薬の開発と提供を加速し、コストを抑制し、健康の公平性を支持する可能性がある。
  • AIは遺伝子の違いを発見するのに役立ち、高血圧の人々のうち、特定の薬によく反応する人々とそうでない人々を説明する遺伝子の違いを発見することができる。
  • AIは新しい治療法を発見するのにも役立つ。
  • AIはデータを処理し、パターンを認識する速度が人間よりもはるかに速いため、「AIは人間が見逃す可能性のあるデータのパターンを見つけることができる」と述べている。
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そして、本題である生成AIについても、製薬における活用を進めようとしています。ファイザーを含む製薬会社は、生成AIを活用して個々の患者データを分析し、患者の遺伝子構造に合わせた個別の治療法の開発ができるようになる可能性を模索しています。

というのも、従来のAIが事前に定義された応答に依存していたのに対し、生成AIは学習したパターンや情報を基に、斬新で意味のあるソリューションを生み出せる強みを持っています。従来の自然言語処理の能力を遥かに超えた能力を大規模言語モデルは有しているのです。

例えば、創薬プロセスの効率化においては、製薬会社は生成AIを活用することで、膨大な生物学的・化学的データから複雑なパターンや関連性を見出し、有望な薬剤ターゲットの特定を加速させる可能性があります。従来なら見落とされていたような潜在的な候補物質も、AIの力を借りれば短期間で浮かび上がってくるかもしれません。これは創薬の初期段階を大幅に短縮し、研究開発コストの削減にも繋がります。

ちなみに、ファイザーはAWSとの提携を通じ、Amazon BedrockやAmazon SageMakerといった最先端のAIツールを自社のAIプラットフォーム「VOX」に取り入れています。これにより、社内の研究者たちがセキュアな環境下で、大規模言語モデルの恩恵を存分に享受できる体制が整いました。すでに17のユースケースで生成AIの活用が進んでおり、年間最大10億ドルものコスト削減効果が見込まれているとのことです。

例えばがんや腫瘍学の分野では、新たな創薬ターゲットの探索にAIが大きく貢献する可能性があります。従来は手作業で文献等をあさる必要がありましたが、今やAIが瞬時に関連情報を収集・編集できます。そこから傾向分析を行い、有望なターゲットを自動で抽出することで、検証プロセスが格段にスピードアップしているのです。

ファイザーだけではなく、製薬各社は、自動化やAI、予測分析の導入を加速することで、創薬プロセス全体の最適化を進めています。正確なデータ収集と分析により、ヒューマンエラーのリスクを最小限に抑えつつ、研究開発を大幅に迅速化していくのです。

ファイザーにおける生成AIの幅広い活用は、製薬業界の巨大企業が技術を活用して薬の開発効率、患者関与、コスト削減を実現するモデルを示しています。また、複雑な医薬品開発プロセスにAIを統合する際の潜在的な報酬と固有の課題を示しています。

また、短期的な実用を叶えるために、積極的に自社のマーケティングコンテンツの高品質化や効率化に役立てているポイントも参考になり、コストとプロフィットの両方をAIで最適化する戦略をぜひ参考にしてみましょう。

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